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新仏大統領マクロン氏 にわか政党で総選挙に勝てる?

5/9(火) 18:01配信

ニュースソクラ

政治力失えば、経済再建なども失速

 5月7日のフランス大統領選挙の決選投票で、中道のマクロン氏が得票率で66.06%、極右政党の国民戦線(FN)ルペン候補が33.94%でマクロン氏が圧勝、第25代大統領に就任することとなった。

 マクロン氏はオランド大統領の社会党政権下で経済相を務めていたが、2016年4月にアン・マルシェ(前進との意味)という独立政党を立ち上げて大統領選に参加した。オランド大統領の不人気で社会党を見限り、敢えて無所属で大統領選に立候補した。

 フランス大統領選の常として当初は二大政党間の政権交代になるとの予想で共和党のフィヨン党首が「最も大統領に近い男」と見られたが、妻子の秘書給与疑惑から失速した。

 社会党のアモン氏は当初から番外の扱いであった。こうした意味でマクロン氏は自らの果敢な決断とその後の幸運に恵まれて39歳という史上最年少での大統領就任を勝ち取ったともいえる。

 マクロン氏は決選投票での国民戦線(FN)のルペン候補との争いでは、第一次投票でフィヨン、アモン氏に投じられた有権者のかなりの票を取り込む形となった。

 ルペン候補のEU離脱、ユーロ離脱の動きを止めるために既存政党も結集したわけである。しかし、マクロンもルペンもいやだ、という勢力も強く、有権者の四人に一人が棄権するという最近50年間で最大の棄権率となった。

 また敗れたとはいえ、ルペン氏の34%という得票率は2012年の前回大統領の二倍の水準であり、フランス社会の分断を如実に示すこととなった。

 マクロン候補の公約をみると、まずEU加盟の継続と移民の受け入れという点でルペン候補とまったく違う。また市場主義を標榜して企業減税、週35時間労働の弾力化を掲げている。

 さらに財政面では600億ユーロの財政収支改善により財政赤字をGDP比3%以内というEU基準に合致することを目指す一方でIT投資などの先端的投資や職業訓練を充実させることを公約としている。

 経済相時代に「マクロン法」と呼ばれる経済活性化を狙って日曜日の小売店営業を弾力化する措置を打ち出した実績もある。

 よく知られているようにマクロン氏は超エリート校である国立行政学院(ENA)を卒業したあと、財務省などを経て名門投資銀行ロスチャイルドでネッスルなどの大型企業買収を手掛け、バンカーの経験もある。

 高校時代の教師である24歳年上の奥さんに16歳の時にプロポーズしたというエピソードが欧米のゴシップ紙で大きく報道された。

 マクロン氏の最大の眼目は6月の議会選挙で自ら創設したアンマルシェが議会で最大限の議席を獲得させることであろう。500以上の選挙区すべてに候補を擁立するが、過半が政治的には素人であり予断は許さない。

 勢力の衰えが目立つ社会党の議員と連携するのか、さらに共和党からも入閣させるのか、といった今後の政治的な連携も課題である。

 国民戦線のルペン党首の得票率が1/3を占めるような分断社会となった最大の要因は1%以下の成長しか示せない経済の低迷である。失業率は10%を超えており、ドイツ、オランダなどの二倍以上の水準にある。

 一方で政府の債務残高のGDP比は100%を超えている。歴史的に見てフランスは官民ともに労働者保護を当然視する気風が強く、解雇や労働条件の切り下げなどの規制が強い。

 財政依存度(対GDP比)が58%と世界最高水準にあるほか、硬直的な労働市場の構造調整にもサルコジ、オランドなどの歴代大統領は手を付けられなかった。改革を目指すマクロン新大統領への期待は大きい。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:5/9(火) 18:01
ニュースソクラ

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