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古典籍から学ぶ、現代技術の活用-国文研、30万点を画像DB化

5/9(火) 15:15配信

日刊工業新聞電子版

 故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る。我々は書物やネットを通じて過去から現在までのさまざまな出来事を知ることができる。だが過去の事柄のすべてを分かっているわけではない。そこで過去の文献情報を基に科学手法を用いて新しい分野を切り開こうとする動きがある。明らかになった過去の知見を我々現代人はうまく生かすことができるだろうか。(冨井哲雄)

DB化を進展

 日本人の書物の中で江戸時代末までに書かれた書物を「古典籍」と呼ぶ。古典籍の内容はさまざまな分野に及び、これらの文献を生かし、異分野融合研究の創出が期待されている。
 現在、大規模な古典籍のデータベース(DB)化を進めているのが国文学研究資料館だ。国文研は国内外の大学と連携し、古典籍の文献など30万点を画像化し、既存の書誌DBと統合した日本語の歴史的典籍のDBを作成中だ。2014―23年度までの10年間の大型プロジェクトで、医学や生命科学、自然災害など異分野の融合研究を促し、新分野の創造を目指している。
 こうした古典籍の画像化の取り組みは文化財の破損や消失に対する保険にもなり、価値ある文化財の内容を後世に伝承することにもつながる。

『明月記』に記載

 公家によるみやびな生活や武士の台頭などが起きた平安・鎌倉時代。そこで実は大規模なオーロラが発生していたという報告が日本や中国の文献で明らかになっている。オーロラは太陽の活動が激しくなり、磁気嵐が起きることで発生するとされている。
 国立極地研究所・宙空圏研究グループの片岡龍峰准教授らは、国文研と京都大学などと共同で、平安・鎌倉時代に赤いオーロラが数日間連続で発生した仕組みを解明した。研究グループは、鎌倉時代の初期の歌人である藤原定家の日記『明月記』の中でオーロラを意味する「赤気」という記述に着目。京都の夜空に1204年2月21日と23日に連続して赤気が出現したとの記述を見つけた。調査した日本の文献の中では最古のオーロラの記述だという。
 一方、過去2000年の京都の磁気を調べると、地磁気の向きが現在とは異なり、日本でオーロラが発生しやすい時期にあったことが分かった。定家が見たオーロラは見間違いではなく、太陽活動の異常によってできたオーロラであることを突き止めた。
 さらに樹木の年輪に含まれる炭素の同位体の割合から当時の太陽活動の強弱を調査。中国の歴史書「宋史」の900―1200年代の記録を調べたところ、太陽活動が活発な時期に長引く赤いオーロラの記述が多くなることを確認した。
 片岡准教授は、「このようなオーロラを発生させる巨大な磁気嵐が現代に発生したら、多くの機器が故障し大変なことになっていたのではないか」と強調する。得られた研究成果は地上での大規模な停電や上空にある人工衛星の故障など将来起こりうるリスクを予測し回避する研究につながることが期待される。

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