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白山開山「泰澄」は実在したか 伝承に似た岩屋、福井に現存

福井新聞ONLINE 5/9(火) 18:07配信

 泰澄大師の足跡を記した「泰澄和尚伝記」で、少年期の修行の様子が書かれた場面と似た空間があると地元研究者の間で注目を集める場所が福井県越前町にある。越知山(612・8メートル)山麓の笈松川に面した岩場だ。同町織田文化歴史館は白山開山1300年を記念して10月に開く企画展で、泰澄の実在に迫る計画で、有力な検証ポイントとして調査を進めている。現地に同行した。

 10世紀に成立したとされる同伝記では泰澄が14歳の時、「坂本の岩屋」という場所を修行に訪れ数百回礼拝し、「南無十一面観世音―」と唱えた後、岩屋を出て越知山をよじ登ったとある。この表記を推測させる場所として、同館の堀大介学芸員が案内してくれたのが、同町入尾から小川に向け笈松川の渓谷をやや下った場所だ。泰澄と越知山の関係を研究している元教員の佐々木英治さん(80)=同町=が調査中に発見したという。

 川の両側は垂直に近い断崖。本当に下れるのかと若干恐怖を感じた。堀さんが掛けた安全ロープを頼りに四苦八苦し50メートル以上下ると、見上げる限りの岩肌が現れた。こけむした岩肌には、上部から斜めに鋭く切り刻んだような大きな裂け目がある。

 堀さんに続き、岩の隙間を入ると、大人3、4人が立てるほどの空洞が現れた。岩が覆いかぶさるようにしてできた空間で、「洞窟」ではなく「岩屋」と記した伝記の表現が当てはまる。

 岩屋の前には大小の滝が連なり、水がごう音を立てて落ちていく。滝と岩屋の間には丸く平らな岩。佐々木さんはこれを「座禅石」と名付けた。その上で足を組み、一帯を見渡した堀さんは「いかにも修験者がこもりそうな場所だ」と感慨深げに話した。

 岩屋の内部では、佐々木さんの調査で泰澄のいた時代に近い7~9世紀ごろの須恵器片が見つかっているという。堀さんは今後、この岩屋をはじめ越知山周辺の泰澄に関係する場所でさらに調査を進めたいと意気込む。進展に期待したい。

 ■泰澄 682年、現在の福井市三十八社町で生まれたとされる。越知山山中での修行を基に717年、白山を開いて白山信仰の礎を築き、晩年は再び越知山に帰山したとされている。一方、正史に現れないのを主な理由に研究者の間では実在性を問う声もある。

最終更新:5/9(火) 18:07

福井新聞ONLINE