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《ブラジル》県連故郷巡り=「承前啓後」=ポルト・ヴェーリョとパウマス(21)「忘れられた地」トカンチンス

5/9(火) 6:24配信

ニッケイ新聞

 3月19日午後の飛行機で、故郷巡り一行は、トカンチンス州都パウマスへ向かい、深夜1時過ぎにようやくホテルに到着した。
 翌20日の朝食時、参加者の一人、聖州サンベルナド・ド・カンポ市の瑞穂植民地で日本語教師をする中谷マリアさん(二世)は、「田辺俊介さんの話を聞いて頭が下がる思いです。こちらが恥ずかしくなるぐらい、一生懸命工夫して教えている。ブラジル人があれだけ日本語を勉強しているのはすごい」と昨日までの感動を振り返った。
 「サンパウロでは、日系と言っても『顔だけ』になっている人も多い。でもあそこで日本語を習っているブラジル人は、みな日本人みたいになっている」としみじみ言う。
 マリアさんに日本語教師の心得を尋ねると、「マッシャード・デ・アシスの小説に『教師は針みたいなもの』という一節があります。私は日本語教師も一緒だと思っています」とのこと。
 その説明をしてもらうと、「糸(生徒)は針の後を付いていくだけ。だけど華やかなパーティの場では、そんな糸で縫われたドレスが注目を浴びる。そして、針はひっそりと裁縫箱に収まっている。私は針でいいと思っています」という。いろいろな人から人生のエッセンスを聞けるのが、故郷巡りの醍醐味だ。

     ☆
 27ある州・連邦直轄区の中で、一番新しいのがトカンチンス州だ。ポ語ウィキペディアの「トカンチンス州」項は約3万字で詳しく説明されているが、日本語の同項ではわずか「470字」しかなかった。どれだけ日本語世界で知られていない場所かが分かる。
 元々はゴイアス州北部だった。1821年以来、たびたび独立運動が起きる辺境の地だったが、そのたびに鎮圧された歴史を持つ。1985年にジョゼ・ウィルソン・シケイラ・カンポス連邦下議が議会に州開設法案を提出し、1988年憲法に織り込まれて悲願を叶えた。当然、彼は州独立の英雄だ。
 公式な「州開始」は1989年1月1日だ。つまり、わずか28年しか経っていない。平均年齢80歳の故郷巡り一行からすれば、孫のような年だ。
 ゴイアス州北部ということは、北にパラー州、東にマラニョン州、南東にバイア州という位置関係だ。アマゾン河を中心とした船が交通機関のアマゾン地域からは南にはずれ、海岸に面した北東伯からすれば「セルトン」のさらに奥にある。ブラジリアまでは南に805キロで、いわば「内陸部の僻地」だった。
 一行をパウマス市内観光に案内したガイドのフラビオ・リベイロさんは、「ここは長いこと『忘れられた地』と言われてきた。何もない場所を開発するには、州として独立させるのが一番早い」という発想だったと説明した。面積は27万7千平方キロと隣国エクアドルより大きい。ちなみに日本の総面積が37万7千平方キロだから、その73%にあたる。そんな土地が「忘れられていた」のだから、ブラジルはデカい。(つづく、深沢正雪記者)

最終更新:5/9(火) 6:24
ニッケイ新聞