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ICTで「MR頼み」打破、変わる製薬会社の営業スタイル

日刊工業新聞電子版 5/9(火) 18:00配信

MRの訪問規制97.2%

 情報通信技術(ICT)各社が製薬企業の営業効率改善につながる商材の提案を積極化する。ウェブ講演会やロボットソフトウエアなど、品ぞろえは多彩だ。病院への訪問規制や地域医療体制の推進で医薬情報担当者(MR)を取り巻く環境が変化していることが背景にある。製薬企業は自社の営業戦略にICTをどう位置付けて活用していくかがあらためて問われる。

 「医師の(医薬品に関する)情報収集スタイルが変化している。(製薬企業は)MR頼みの営業モデルを改める必要がある」。デロイトトーマツコンサルティング(東京都千代田区)の西本悟朗執行役員はこう訴える。

 同社が2016年4月に行った調査では、高頻度で利用する情報収集チャンネルとしてMRを挙げる医師の割合は約4割だった。他はウェブサイトや講演会、同僚とのやりとりなどで薬の情報を入手することが多い。

 また、MR認定センターが15年5月にまとめた報告によると、医療機関の97・2%でMRの訪問を規制する何らかの枠組みが存在する。医師や薬剤師が以前より多忙になったことや、製薬企業との癒着防止などが理由に挙がっている。都合が良いときに情報を得たい需要は大きいようだ。

ウェブ講演会にシフト

 こうした動向を踏まえ、ICT各社がインターネットによる動画配信を活用したウェブ講演会サービスを拡販している。製薬企業のMRに医師向けの営業ツールの一つと位置付けてもらうのが狙いだ。エムスリー傘下で同サービスを手がけるエムキューブ(東京都港区)の新井浩二社長は「先生方も講演会を依頼されると悪い気はしない」と指摘する。

 Jストリームは16年度に医療関連で1000件以上の実績があり、17年度も16年度を上回る案件数を見込む。自社で動画制作スタジオを持ち、映像配信状況の監視もできる総合力を訴求。「講演会で話す人も聞く人も医師なので、失敗できない」(阿部兼佑営業企画部マネージャー)と考える顧客企業を取り込んでいく。

 一方、簡易的な講演会の需要も大きい。政府は医療や介護を地域で一体的に提供し、大病院への集中を分散する地域包括ケアシステムの構築を推進している。この下で医師や薬剤師、ケアマネジャーといった複数の専門家が連携する必要性が増しており、動画を使った情報共有の頻度が高まる可能性もある

 そこでエムキューブは「かんたん講演会」という商材を展開。MRが、パソコンなど最低限の機材をインターネット接続環境がある場所へ持参すれば映像を配信できる仕組みだ。作業担当者を現場に派遣するサービスもしており、その場合でも講演会1回当たりの費用は30万円程度という。同社は17年に16年比2・7倍となる700回の開催を見込む。

 ブイキューブも低コストをうたった「地域版ウェブ講演会」を、17年12月期に前期比3倍の15社へ導入する目標を掲げている。ICT各社の競争が激化することになりそうだ。

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最終更新:5/9(火) 18:00

日刊工業新聞電子版