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【社説】「共謀罪」 廃案にして出直すべきだ

カナロコ by 神奈川新聞 5/9(火) 11:29配信

 権力による乱用が懸念されている「共謀罪」(テロ等準備罪)法案の国会審議が正念場を迎える。政府与党は今国会中の成立を目指すが、金田勝年法相らの答弁を聞く限り、捜査機関による恣意(しい)的な運用、監視社会の強化といった疑念が消えない。

 自民党は同法案の閣議決定後、所属国会議員に対し「『テロ等準備罪』について」という資料を送付した。地元支持者への説明などに使う参考資料だが、都合の良い解釈や詭弁(きべん)が目につく。

 共謀罪は犯罪を計画した段階で処罰できる。ゆえに人々の内心にまで権力が踏み込む恐れがある。

 自民党の資料では例えば、その対象となる「犯罪主体」を〈テロ集団・暴力団・麻薬密売・人身売買など、重大な犯罪の実行を目的とする組織的犯罪集団〉と例示する。

 だが、法文上は「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と定める。つまり主体の定義が不明確で、あらゆる集団が対象になり得るという抜け穴が存在する。

 しかも、「組織的犯罪集団」には事前の指定や認定が必要ない。組織が犯罪集団に一変したとする判断は捜査機関に委ねられている。捜査機関が怪しいと見込みさえすれば、逮捕や拘留など強制捜査の対象となり得よう。

 法文が曖昧で恣意的に解釈できるため、反原発や反基地など政府の意に沿わない活動をする一般市民や団体に矛先が向かわないとは言い切れない。ところが、資料は〈一般の方々が、処罰の対象になることはありません〉と断言する。

 また、対象犯罪の選定も不可解な点が多い。277に上る犯罪にはテロとはおよそ無縁で非現実的なものも含まれる。一方で、本来必要であるはずのものが抜け落ちている。

 例えば、「特別公務員職権濫用(らんよう)罪」や「特別公務員暴行陵虐罪」「公職選挙法違反罪」などだ。要するに、公権力を私物化するような犯罪類型が除かれている。こうした権力側に有利で、一貫性に欠けるのも共謀罪法案の特徴である。

 しかし、自民資料はちぐはぐな法律の立て付けには目をつぶり、必要性のみを強調する。与党議員は良心に立ち返り、法案に潜む危険性、落とし穴に目を凝らしてほしい。強行採決に持ち込むような事態などあってはならない。むしろ廃案にして出直すべきである。

最終更新:5/9(火) 11:29

カナロコ by 神奈川新聞