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正しい「議事録」の書き方

@IT 5/10(水) 7:10配信

 あなたは仕事でドキュメントを作る際、どのソフトウェアを使っているでしょうか。

 これは業界次第で傾向が大きく異なります。広告業界やコンサル業界は「PowerPoint」が大好きですし、官公庁や出版業界は「Word」文書で溢れています。

【変更履歴をONにした議事録。修正の課程が全て記録されている】

 IT業界は「Excel」が多いですね。進捗(しんちょく)管理に使う「WBS」や「課題一覧」、設計フェーズの成果物となる「設計書」に至っては、Excel以外のフォーマットで作られたものを見たことがほとんどありません。

 しかし、IT業界でも「これだけはWordで作る」という定番の文書があるのを知っていますか?

●Wordで作るべきドキュメント

作成頻度の高いもの

1 議事録
2 要件定義書

完成度を高めたいもの

3 提案依頼書(RFP)
4 謝罪報告書

 ドキュメントのフォーマットには向き不向きがあります。プロジェクターを用いて「プレゼンテーション」するならスライド単位で作るPowerPoint、「項目整理や表集計」なら表作成と表計算ができるExcelが最適です。同様に、Wordに最適なドキュメントもあるのです。それは、「A4タテ型で作る複数ページの文書」と「文言の変更履歴を残す文書」です。

 この条件にピッタリ当てはまるドキュメントがIT業界にもあります。本連載はその中から「作成頻度の高いもの」と「完成度を高めたいもの」の代表格である4つのドキュメント作成方法を解説します。初回は「議事録」の書き方です。

●議事録に記載する「項目」

 前提として、会議の参加者は、全員があなたと同じ認識を持っているわけではありません。認識違いのせいで物事が遅れたり、やり直しになったりすることを防ぐには、「話し合った結果」を文章にして確かめるのが1番確実です。そのために書くのが、「議事録」です。

 議事録には、「いつ」「どこで」「誰が」「どんな会議に参加」し、「どんな討議資料を使って」「何を議論した」かを記述します。

 「誰が」=参加者の項目は、所属組織(会社、部署)ごとに記述を分けます。発言者の組織が分かると、文字に表現されていない発言の「意図」を推測できる場面があります。中立的に述べているようで組織寄りの発言をしていた、という部分に気付きやすくなりますし、参加者の役職(肩書)を明記すると、「発言の力関係」も見えてきます。

 議事内容には「発言者名」を記述し、会議中の「決定事項」「TODO」(アクションアイテム)を、個別に明記します。アクションアイテムには必ず「担当者」と「期限」を定めます。「次回会議の予定」があれば、それも含めます。

 以下に、ポイントをまとめます。自分が書いた議事録の見直し観点、他の人が書いた議事録のレビュー観点としましょう。

1 「決定事項」と「ToDo」は全て明示する

期限のない意思決定は「決定事項」
期限のある意思決定は「ToDo」

2 ToDoには「担当者」と「期限」を設定する

不明な場合は、会議の最後に必ず確認する

3 短く完結に書く

敬語は不要
冗長な言い回しや、なくても通じる表現は削る
決定事項やToDoに直結しないやりとりも削る

4 足りない情報は書き加える

「暗黙の前提」は明示する
「文脈上の主語」も明示する

5 「呼称」を統一する

役職名で表示、役職名を持たない相手は三人称敬称(氏)など

6 「具体的」に書く

日付ならば、「来週」ではなく「5月15日」のように具体的な日付を記す

7 「言い回し」を調整する

「口語表現」は使わない
推測を断定的に書かない

●議事録作成で活躍する、Wordの「変更履歴機能」

 十人十色という言葉通り、人の数だけ考え方や捉え方には違いがあります。誰かが「正しく」書いた議事録は、別の誰かにとって「正しくない」かもしれません。

 例えば、あるプロジェクトで導入したITシステムのアプリケーション品質について「図1」のやりとりが会議中にあったとします。

 「図2」は、Aさんが自分の都合に合わせた解釈で議事録にしたものです。

 Bさんは、システムを改修してほしいので、「取りあえず使うけど、何とかしてください」と要望を伝えました。

 しかし、Aさんの書いた議事録では「ずっと今のままでいいよ」というニュアンスになっています。Bさんの主張とは真逆の内容なので、BさんはAさんへ修正を依頼しなければなりません。

 こんなとき便利なのが、Wordの校正機能です。「変更履歴」を用いると、修正のやりとりが容易になり、「誰が」「どこを」修正したのかが分かりやすくなります。

 文書をレビュー者へ渡すときには、変更履歴機能をオンにして送りましょう。受け取った相手が文書に修正を加えると、「図3」で示すように、変更履歴が全てWord文書に記録されます。

 履歴は、文章の外側に記録する方法「1 変更履歴タイプ」と、文章中に記録する方法「2 コメントと書式タイプ」を選べます。筆者は、修正反映後の見た目とずれが生じない「1」を推奨します。

 「図4」は、変更履歴「コメントと書式タイプ」の設定方法です。

 議事録のレビューは「図5」、最終的に完成したものが「図6」です。

 Wordの変更履歴を活用した議事録の書き方を解説しました。次回(5月15日掲載)は、「要件定義書」の書き方を説明します。

○書籍
外資系コンサルのビジネス文書作成術
吉澤準特著 東洋経済新報社 1944円(税込み)
大手コンサルティングファームでドキュメンテーションスキルを指導する著者が、ロジックの組み立てと効果的な表現をWord上で思い通りに実現するテクニックを解説する。

連載「エンジニアのためのビジネス文書作成術」は、書籍「外資系コンサルのビジネス文書作成術」(吉澤準特著 東洋経済新報社)を基に、出版社の許可を得て、筆者自身が@IT読者向けに再構成したものです。画像はWindows 7 + Word 2013上のものです。機能はWord2013、2016のいずれでも使用できます

筆者
吉澤準特
ITコンサルタント
外資系コンサルティングファーム勤務。ビジネスからシステムまで幅広くコンサルティングを行う。専門分野はシステム運用改善をはじめとするインフラ領域だが、クライアントとの折衝経験も多く、ファシリテーションやコーチングにも造詣が深い。
著書『資料作成の基本』『フレームワーク使いこなしブック』(以上、日本能率協会マネジメントセンター)『外資系コンサルの仕事を片づける技術』(ダイヤモンド社)など。

最終更新:5/10(水) 7:10

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