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社長が語る「ライザップ経済圏」とは

ITmedia ビジネスオンライン 5/10(水) 7:10配信

 プライベートジム「RIZAP」を運営するライザップグループ。売上高約600億円に及ぶ同社の成長を加速させているのが、「自己投資産業で世界一になる」という合言葉のもと推し進められている積極的なM&A戦略だ。グループを「美容・健康関連事業グループ」「アパレル関連事業グループ」「住関連ライフスタイル事業グループ」「エンターテインメント事業グループ」と4つのカテゴリーに分類し、子会社の数は実に44社にのぼる。

【「自己投資産業で世界一になる」という合言葉のもと積極的にM&Aを展開するライザップグループ】

 とりわけ最近は東証1部のジーンズメイトを傘下に収めるなど、アパレル業界への参入に注力しようとしているのがうかがえる。健康食品からジムまで原価率の低い高粗利商品でビジネスのスケールを図ってきたライザップがなぜアパレルに参入するのか。また、さまざまな事業領域に参入し、多角的な経営を推し進める裏にある競争優位性とは何か。「『人は変われる』ということを証明したい」と語る瀬戸健社長に今後の展望と戦略を聞いた。

●多角化でもブレない軸とは

――近年、ライザップグループの事業は多角化しつつあります。改めて、グループとしてのビジネスの全体像をお伺いしてもよろしいでしょうか。

瀬戸: 当社は「人は変われるを証明する」という明確な理念を持っており、自己肯定ができる商品やサービスに焦点を当てています。もともと豆乳クッキーの開発・販売から創業していますが、次に手掛けたのは「美顔器」でした。当時は「クッキーの会社がなんで美顔器?」と何度も聞かれたのですが、クッキーも美顔器もあくまで手段に過ぎません。ユーザーが求めているのは、あくまでも「綺麗になりたい」や「自信を持ちたい」という思いです。

 また、従来の「パーソナルトレーニング」が提供していたのは、「トレーニング」そのもの。われわれは「理想の体」と「自信」を提供しています。ゴルフや英会話の事業に関しても同じことが言えますし、それを提供できなければ(結果が出なければ)全額返金というのも共通しています。一面的には確かに「多角化している」とも言えるかとは思いますが、手段を通じて目的(自己肯定感)を提供する点では一貫しているのです。今まで自分を肯定できなかった人に対して、「人は自分を肯定しながら、変わっていける」ということを事業を通じ証明していきたいです。

――「自己肯定感」を提供できる事業にこだわる理由は何ですか?

 「マズローの欲求5段階説」を元に、もう少し説明させてください。戦後の日本を考えてみると、この説でいう「生理的欲求」「安全欲求」に当たる「食べられるだけで幸せ」という時代があったかもしれません。つまり、生きることに精一杯で、人から自分がどう見られるかは二の次だったわけです。

 時代が高度経済成長に入っていくにつれて、「安全欲求」から「社会的欲求」、そして「尊厳欲求」「自己実現欲求」へと求めるものが変わりました。自分がなりたい姿、自分が生きる意味といったことを考える余裕が出てきたからです。その余裕はやがて悩みとなり、人と違うこと(個性を持つこと)自体が目的化していくのです。

 着る服一つとってみても、昔は丈夫で長持ちすること、着るという機能が服の目的でした。それが当たり前になると、今度は服に自分の価値を高めたり、自分を肯定させてくれるモノを求めるようになってくる。だから皆さん、服を買い替えるようになるわけですよね。服に限らず、バッグや時計、もしかしたら携帯電話でさえもそうした目的で買われるようになりつつあるのはないでしょうか。こうした手段を通じて、人は死ぬまで自己肯定感を追求する時代に入っていると思うんです。

 だからこそ、われわれは一切”必需品”を扱いません。自分に自信が持てて、自己肯定ができる商品やサービスを追求します。例えば、2017年に買収したジーンズメイト。近年低迷していた理由は、ユーザーが求めている価値を提供することができていなかったからだと思います。服というリアルなモノでも、あくまで無形の価値(自己肯定感)を提供する必要があるということです。

●なぜジーンズメイトを買ったのか

――目的志向の哲学が全ての事業に一気通貫しているということですね。M&Aに関しての戦略についてもお伺いできますか?

瀬戸: 当然、事業ドメインはあります。どれも「自己投資」に関わるものです。われわれは開発からプロモーション、販売までを一気通貫で行ってきましたので、ノウハウや顧客データも蓄積されています。M&Aにおいても、この強みを生かせるドメインに進出しているのです。

 パーソナルジムとジーンズメイトの連携でいえば、「何キロ痩せたらジーンズメイトの商品をプレゼント」といった来店動機につなげる施策を既に検討中です。また、「あなたの今の体型にはこんな服が似合います」といったように、そのときの体型ごとに商品をレコメンドできるようにします。

 もちろん、カロリーを消費しやすいウェアや、体力の回復を早めてくれるリカバリーウェアの研究開発もしていますが、まずはイケてる商品に変えていくことが大切です。

 人は痩せてくると、無意識に鏡を見る時間も増えますし、何より自分を肯定できるようになっていきます。そうなると、自分に対しての投資へと消費自体が変わっていく。似合う服も増えるので、楽しく買い物ができるようになります。

 また、自分の個性に合わせた服を着こなしていくことで自信も出てくるようになります。理想に近づいていくなかで、より自己肯定も深まっていくんですね。その過程における人の変化は目を見張るものがあります。そして、そこに新たな需要(ビジネスチャンス)が生まれるんです。

 ですから、ジーンズメイトの商品価格も従来よりも少しだけ高めに設定し、自分の価値に高められるブランドに改革していきます。安っぽいイメージの服を着ていても自己肯定を得られにくいですからね。

 このように蓄積された顧客データを生かしながら経済圏を形成していくわけですが、やはりデジタルだけではなく人の存在も変わらずに重要だと思います。個人単位での趣味嗜好(しこう)が明確化されたデータに基づいて、人がアドバイザー的に価値提供を勧めていく。そうした事業を作っていけるかがポイントになるのではないかと考えています。

●「ライザップ経済圏」に限界はない

――そうした世界観の先に1兆円規模の「ライザップ経済圏」を構想されているということですか?

瀬戸: はい。「生理的欲求」を満たすような必需品は市場規模に限界がありますよね。食べ物を例にとれば、ある一定以上胃袋が広がることはありません。一方で自己投資に基づく買い替え需要に限界はないので必ず伸び続けていきます。現在も英語教室や料理教室の事業を展開していますが、今後もこうした教育事業、自己投資事業により力を入れていきます。

 われわれに終わりはありません。会社としての自己実現は、ある意味で『ドラゴンクエスト』のようなRPGに近いかもしれませんね。1人でスタートした当初は「スライム」すら倒すことができない。それでも同じ目的を共有する仲間が集まり、戦いを重ねることで経験値もたまり、強くなっていく。最終的にラスボスを倒せるようになるというプロセス自体が目的なわけです。それは会社も個人も一緒です。

 さらに言えば、人生にはゴールがない。高い時計を買ったからといって、必ずしも幸せが手に入るわけではありません。また次に欲しくなるものが出てくるのです。ちなみに僕自身は、時計は2回しか買ったことがありませんし、靴下は100円ショップで買ったものだったりしますが(笑)。

――最後に、改めて「ライザップグループ」としての目標、そして瀬戸社長自身が事業を通じて成し遂げたい自己実現について教えてください。

瀬戸: 世界一収益を上げる企業にしたいと本気で思っています。「人は変われる」を証明するという事業を通じ、社会に価値を生み出せるということ自体に最大の自己肯定感を見い出せるんです。

 自己肯定感というものは、つまるところギブ&テイクの「ギブ」のこと。「ライザップでよかった!」というユーザーの声を聞くと、涙が出るほどうれしい。なぜかといえば、「自分の事業には意味があるんだ」ということを自己認識できるからに他なりません。「なぜ自分が感動しているか」ということを知ることで、人生の幸せな過ごし方が分かると思うんです。だからこそ、事業もそこを追求していきます。まずは、20年までに売上高3000億円を目指します。

(長谷川リョー)

最終更新:5/10(水) 10:34

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