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米国のロードサービス企業が始めたカーシェアは、路上を含めて、どこに乗り捨ててもOK!?

アスキー 5/10(水) 10:00配信

米国のロードサービスでおなじみのAAAが始めたカーシェアサービスは、専用の駐車場ではなく、路上に乗り捨ててもOKというユニークなものです。

 ゴールデンウィーク、いかがお過ごしだったでしょうか。
 
 カリフォルニア州バークレーは、カラリとした晴天が続き、気温も23度ほどと過ごしやすい陽気が続いています。これからの季節、時折暑い日もありますが、日本のじめじめした梅雨時や蒸し暑い真夏のシーズンは、サンフランシスコ周辺への旅や出張は、とても快適だと思います。
 
 そんなバークレーで、最近目にするようになったのが、黒いトヨタの「Prius C」です。これは小型のハイブリッドカーで日本ではアクアとして販売されているもの。ルーフには水色の、自転車などを搭載できるレールが付いていて、ちょっと印象的です。
 
 車体には「Gig」と書いてあるこの黒と水色のPrius C。1台見つけたら、途端にたくさん目につくようになりました。バークレーの街を南北に貫くシャタックアベニューや駅前周辺、自宅近くのスーパーの脇の道路など、すぐ目につくところに大量に止まっているのです。
 
米国のロードサービスでおなじみの
AAAが始めたカーシェア
 クルマをよく見てみると、AAAの名前がありました。AAAといえば、米国ではおなじみのロードサービスを提供する「トリプルエー」のこと。このAAAが、バークレーとその隣のオークランドでスタートした新しいカーシェアサービスが、このGigというわけです。
 
 Gigのサービスはシンプルで、1マイル(1.6km)で2.5ドル、1時間15ドル、1日借りると85ドルです。入会時のプロモーションコードで、85ドル分のクレジットが付いてきます。それでみんな一斉に乗り出したというわけでしょう。
 
 バークレーでは、ZipcarやCity CarShareといったカーシェアリングサービスがすでに存在していて、街の中のさまざまな駐車場に、この2つのブランドのカーシェアリング用のクルマが駐車されている様子を見ることができます。
 
 しかし、Gigにはそうしたカーシェア用の駐車場というものが発見できません。それでもこうしてサービスを開始しているというのはなんらかのからくりがあるはずです。
 
路上や駐車場など、どこに停めてもOKの仕組みがスゴい
 専用の駐車場がないカーシェアサービス。しかも路上駐車が多い。このあたりが、Gigのサービスのヒントと言えます。
 
 これまでのカーシェアサービスでは、止まっていた場所にクルマを返さなければならないことがほとんどでした。そのため、買い物のためのチョイ乗りや、レジャーで1日使って、また元の場所に返すという使い方になっていました。
 
 しかしGigの場合は、バークレーとオークランドの市内(HomeZone)であれば、路上駐車や公共駐車場への乗り捨てがOKなのです。各車には、オークランドとバークレーの年間駐車許可証が取られており、使う人が駐車代を払う必要はないのです。
 
 これはカーシェアでなくても、自動車をバークレーやオークランドで使う上でのストレスが一挙に減ります。こちらでも駐車の取締は頻繁に巡回しています。なのに、パーキングメーターがあるところでも駐車代を払わなくても良いし、2時間までという路上駐車の制限も関係なく、乗り捨てることができます。
 
 しかも、駐車してもキープしておきたければ、そのクルマにログインしっぱなしにしておくこともできますし、リリースして他の人にクルマを開放することもできます。街中での利用を考えると、よりフレキシビリティが高いサービスと言えます。
 
スマホアプリで空いているクルマを探せる
 このGigはバークレーとオークランドだけのサービスですが、250台のPrius Cを投入していること、筆者が店舗の多いエリアに住んでいることで、頻繁に見かけるのかもしれません。
 
 なお、専用の駐車スポットがないGigを街中で探すには、アプリを使います。言ってみれば、Pokemon Goと同じ要領ですが、出現率はもう少し高めという印象がありますね。アプリでその場所のクルマを予約し、30分以内に乗車して利用するだけです。
 
 筆者の自宅周辺を見てみても、たくさんのクルマが駐車中です。リストを見ると、車種はPrius Cしかないので料金はどれも同じなのですが、ガソリンの残量と到達距離も確認できます。
 
自動車の偏りをいかに修正するか
 こういう乗り捨て可能なクルマや自転車のサービスは、クルマの偏りをいかに是正するのかという問題があります。
 
 駅前から離れたショッピングやレストランが集まるエリアには、どうしてもクルマが貯まってしまいます。特に夜。行きはUberより安いので自分でGigを運転していき、お酒が入った帰りはUberで、という人が多いと、夜中にはショッピング街周辺に集中してしまうことになります。
 
 これもサンフランシスコ市内でもよく見かける光景ですが、レンタルの自転車の場合、集まった自転車をトラックに積み込んで分散させるというオペレーションをしなければなりません。
 
 しかしクルマの場合は、カートレーラーを使うのも難しいので、人がなんらかの形で分散させる必要があります。この点が、駐車スポットが決まっていた既存のカーシェアとは違う苦労する点になるのではないかと思います。
 
 たとえば、クルマが大量に集まっているエリアから別の場所に移動するときに料金を割り引いたり、ポイントを付ける、といった施策をするなどしながら、クルマをいかに分散させておくかが重要になってくるのではないでしょうか。
 
街作りに役立つ面白いデータも蓄積されるはず
 このサービスは前述のとおりに、バークレーとオークランドのHomeZoneの都市にとっても、面白いデータがもたらされるかもしれません。
 
 クルマの移動や偏りを見ていくことで、どのエリアに対して移動したいというニーズが高まっているのかを知ることができます。こうしたデータは、街造りや公共交通を設計する上で、非常に有用なリアルタイムデータになり得るからです。
 
 Uberは「Uber Movement」と呼ばれるサイトで、これまで蓄積してきた都市と交通に関するオープンデータを公開しています(現在は限定公開、後に一般公開予定)。さまざまな種類の意図の「移動意向」のデータが集まることで、都市設計を多面的に考えていくことができるようになります。
 
 米国の都市を見ていると、シムシティ感覚が強いです。街になんらかの施設ができると、その施設に応じて街の治安や地価の高騰、教育レベルの上昇が発生します。
 
 特にここ数年のバークレーやサンフランシスコでは、治安の改善と文化施設やテクノロジー企業誘致に相関が出ているように感じます。変化しやすい街のなかで、多くのデータがもたらされることによって、街の機能の最適化が起きてくることが期待できます。
 
 ただ、“最適化”というのは、個人的にはさほど信奉していない概念でもあります。最適化が進んでしまうと、大きな変数が与えられたときに、対処しにくいという脆弱性も持つことになるからです。
 
筆者紹介――松村太郎
 
 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
 
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
 
文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

最終更新:5/10(水) 10:00

アスキー