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“対象外”にも持続的効果 閉塞性動脈硬化症の新治療法とは

日刊ゲンダイDIGITAL 5/10(水) 9:26配信

 動脈硬化の進行によって下肢の動脈の狭窄で引き起こされるのが「閉塞性動脈硬化症(ASO)」だ。歩くと下肢に痛みが起こって歩行困難になる間欠性跛行が特徴的な症状で、進行すると安静時にも痛みが表れたり、靴ずれなどがきっかけで足に潰瘍ができ、時には壊死に至る。

 速やかな治療が必要だが、ASOは重篤な動脈硬化合併症の一つなので、重症患者ほど喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病など多数のリスクファクターを抱えている。そのため、進行例では治療が困難だ。

「血管内皮細胞の障害が大きく、リスクファクターを是正しても、閉塞性動脈硬化症の改善につながりにくいのです」(横浜市立大学医学部循環器・腎臓内科学主任教授・田村功一医師)

 滞った血流を良くする血管内カテーテル治療術や外科的血管バイパス手術もあるが、末梢の動脈まで狭窄が多発していたり、全身状態が悪いことから不可能なケースが珍しくない。また、可能であっても治療効果が不十分で再発し、下肢切断に至る場合も多い。

■血液から悪玉コレステロールを除去

 こういった患者に対し、人工透析と同じような血液浄化療法「血漿吸着療法」が効果を上げている。体外に排出した血液を血漿分離器で血球成分と血漿成分に分離し、血漿のみを吸着器で吸着する。このうち、動脈硬化の一番の原因となるLDLコレステロール(以下LDL)を吸着除去したうえで、血液を体内に戻す治療法だ。

 ただ、保険適用になるのは、薬を使っても総コレステロール値が220(mg/dl)、またはLDL値が140以下にならない高コレステロール血症の人のみになる。しかし、ASOのリスクファクターはコレステロール値(脂質異常症)以外もあり、LDL値が正常の人も少なくない。

 田村医師は重症の閉塞性動脈硬化症患者の治療を担当する中で、血漿吸着療法には2つの作用があることを証明した。「動脈硬化への増悪作用が強い酸化型LDL(LDLが血管内壁で変化したもの)を長期的に減少」と「炎症系や凝固系の成分の改善」だ。これらの作用によって、障害が大きい血管内皮細胞を活性化させることを突き止めた。

「血漿吸着療法によるLDLの低下効果は短期間しか認めませんが、閉塞性動脈硬化症の改善効果はある程度持続します。つまり、LDL値が正常であっても血漿吸着療法で血管内皮細胞を活性化させれば、ASOが持続的に改善できるのです」

 コレステロール値が正常のASOの患者19人を対象にした試験では、ASOの重症度を判定する「ABI」(足関節の収縮期血圧÷上腕の収縮期血圧)が、平均0・59から0・67へ改善した。ABIが0・9以下だとASOと診断され、0・1の差が死亡率を変える。この結果は大きい。

 間欠性跛行で歩行不能となる距離も、171メートルから294メートルへ延長した。間欠性跛行症状が出現するまでの歩行距離は改善の判定の一つになる。19人のうちABIが著しく良くなった10人では、歩行距離は118メートルから333メートルへとかなり延びた。

 現在、横浜市立大学付属病院は、厚労省から先進医療Bの承認を受けてコレステロール値が正常なASOに対する血漿吸着療法を実施している全国で唯一の施設となる。ABIが0・7未満をはじめ、いくつかの条件に該当する人が対象だ。

「予備的臨床研究の結果では、1クール(10回)実施後3カ月の検査でも血漿吸着療法による血管内皮細胞の活性化の効果は維持されていました。リスクファクターへの従来の治療は継続していただくことが前提です」

 メーカーによる治療機器の無償提供で、自己負担額は本来の10分の1に当たる約13万円。

〈先進医療Bとは〉

 厚労省による先進医療Bは適応外使用を伴う医療技術などが対象で、審査が先進医療Aより格段に厳しい。

最終更新:5/10(水) 9:26

日刊ゲンダイDIGITAL