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広がるオープンイノベーション「川崎モデル」 知財交流から試作協力へ

日刊工業新聞電子版 5/10(水) 18:00配信

大企業と中小、新たな連携

 川崎市のオープンイノベーション施策「川崎モデル」が広がりを見せている。参画する大企業が増え、地域金融機関も深く活動に関わるようになるなど着実に成果を上げてきた。特に大企業との関わり方は変化しつつある。従来、同市は中小企業の新商品開発のため大企業へ知財の提供・開放を要請していた。最近は同モデルの枠組みを広げ、大企業が使う試作品を中小企業が提供するため共同で研究を行うという新モデルの模索を始めている。

 「川崎モデル」は川崎市が2005年から始めた施策。市職員が企業を訪問して各種助成制度を紹介する「出張キャラバン隊」や、キャラバン隊で得た中小企業ニーズを大企業の開放特許とマッチングし、新製品開発につなげる「知財交流会」で構成する。2月末までに開放特許実績はマッチング成約25件、製品化数18件となった。

 川崎市は3月、荏原製作所と市内中小企業約30社の交流会を初めて開いた。荏原製作所は風水力機械、環境事業、精密・電子の3カンパニーで事業を展開する。各カンパニーは部品を供給する協力企業とサプライチェーンを形成しているが、課題もある。前田東一社長は「各カンパニーのサプライヤーは通常製品を納めることが優先。ちょっと作ってと試作を頼むことは難しい。研究開発用の協力企業が必要」という。

 そこに登場したのが川崎モデル。市内企業の技術や強みを知る市や川崎市産業振興財団の職員が大企業のニーズに合う企業を紹介する。川崎市の木村佳司経済労働局産業政策部企画課オープンイノベーション推進担当課長は「川崎は名簿の提供ではなく、実際に技術や企業をつなげる取り組みを積み重ねている。そこが評価されたのでは」とみている。

 キャラバン隊に同行し、市内企業数社を訪問した荏原の辻村学取締役執行役専務は「川崎の中小企業は試作に強い。試作に慣れ、スピードが速い」と期待する。荏原は高い技術を持つ市内の企業に、研究開発用の試作品製造を依頼する体制の構築を目指す。前田社長は「我々の発展には協力会社の発展が不可欠。新技術を持つ会社を1社でも多く見つけたい。待つだけでは見つからず、川崎市の活動で実力ある企業を知ることは重要」という。

 川崎市のキャラバン隊も行政主導から“官金連携”を強化し、訪問企業を金融機関の職員が探す仕組みへと変わっている。川崎信用金庫(川崎市川崎区)は14年1月から17年3月まで全7回の知財交流会を主催。3月に富士通と同社川崎工場で開いた交流会には13社15人が参加した。業務部経営サポートセンターの中島太一郎調査役は「市内企業の活性化が目的。頑張る企業を応援したい。ゆくゆくは融資などにつながれば」と話す。

 数万件の知財を保持する富士通の広瀬勇一法務・コンプライアンス・知的財産本部知的財産イノベーション統括部ビジネス開発部部長は「多額の投資をして開発した特許技術を、限られたビジネス分野にとどまらずうまく使ってもらうことで企業活性化につながる」と力を込める。

 今後は川崎市が大企業を開拓し、金融機関がパイプを太くするという役割分担も加速しそうだ。

最終更新:5/10(水) 18:00

日刊工業新聞電子版