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「自宅で出産した。助けて」電話相談は過去最多6565件 預けられた子の1割に障害 「赤ちゃんポスト」10年 「匿名性」なお課題

西日本新聞 5/10(水) 10:35配信

 親が育てられない子どもを匿名で預かる国内唯一の施設「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」が10日、開設10年を迎える。2015年度までの9年間に125人が預け入れられた。当初から「親の養育放棄を助長する」などの批判もあったが、運営する慈恵病院(熊本市西区)の蓮田太二理事長は9日、市内で記者会見し「命を守るという点で役割を果たせた」と振り返った。

 07年5月から運用を始め、子を預けた親の居住は、判明した95人のうち九州が39人(うち熊本県9人)、関東22人、中部11人、近畿10人。県外からの預け入れが大部分を占める状況を踏まえ、ゆりかごの設置を許可した熊本市の大西一史市長は9日の会見で「一自治体、一民間病院のレベルの問題ではない。全国的な課題として捉えるよう、国や他自治体に働きかけたい」と強調した。

 連絡が取れた親からの聞き取りによると、預けた理由は「生活困窮」が最も多く、未婚であることや世間体を気にして、などが続く。預けられた子どもの約1割に障害があったという。

 運用と同時に開設した24時間体制の妊娠に関する電話相談は、07年度の501件から増え続け、16年度は過去最多の6565件に上った。「自宅で出産した。助けて」などの緊急性の高い相談や「夫以外の子を妊娠したが中絶するお金がなく、誰にも相談できない」といった貧困や孤立を示す相談も目立つ。

 同院によると、妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる「新出生前診断」が13年に開始されて以降、子の障害を理由とする養育放棄の相談が増え、産後うつに悩む女性からの相談も増加傾向にあるという。

 子を預ける親の匿名性を守ることが「捨てられる命」を救う一方で、成長した子どもが出自を知る権利が奪われるとの指摘も国内外に根強い。会見で蓮田理事長は「運用の見直しはしない。絶対に知られたくないという人の思いは命懸け。匿名を無くすと預ける人がいなくなる」と述べた。

=2017/05/10付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:5/10(水) 10:35

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