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「かわいそう」から「かっこいい」へ…パラアスリート・山本篤が本当に見てほしいこと

スポーツ報知 5/10(水) 16:01配信

 「あの子は足が動かないから助けてあげなさい」。小さい頃からそう教わってきた。生まれつきの不幸、事故や病気による挫折。それぞれの理由で障がい者になり、健常者が手をさしのべる。テレビや新聞、ネットの記事でも悲劇を乗り越えて頑張る姿を伝えていた。「障がい者=かわいそう」。このイメージが脳に刷り込まれている。ただし、必ずしもそうではない。

【写真】リオ五輪で銀を獲得した山本篤の跳躍

 この偏見を覆そうとするアスリートを取材した。パラリンピックの08年北京、16年リオ大会で走り幅跳び銀メダルの山本篤(35)=スズキ浜松AC=。世界陸上では2連覇中の超人だが、自身が健常者だった頃は「障がい者=かわいそう」の側にいたという。

 高2のバイク事故で左脚を切断し、義足で陸上を始めて意識が変わった。「『いや、違うぞ』って。陸上で上に行けば行くほど、かわいそうな人たちなんか全然いない。むしろ、自分の能力を高めようとしている人しかいない」。確かに、挫折を乗り越えようとする人間ドラマは胸を打つ。でも、山本が見てほしいのはそこじゃない。

 08年北京大会。初出場で銀メダルを獲得したが、取材に来たのは社会部の記者だった。「その人にかみついたんですよ。『なんで社会部の人間が来るんだ。俺らはスポーツをやってんだ』って」。その記者には「社会面なら枠がある。大きく載った方がいいじゃないか」と諭されたが、血気盛んな26歳には納得できなかった。「ほんの数センチでもいいからスポーツ面に載りたかった。山本篤のパフォーマンスを知ってほしい。僕らは昔からその辺で葛藤がある」。世界一を争うアスリートのプライドだった。

 私も学生時代に12年ロンドン大会を紹介する海外の映像を見て変わった。タイトルは「スーパーヒューマン(超人)」。腕や脚がなくても、目や耳が不自由でも、そんなことを感じさせない激しい動きだった。「かっけー!」。いつかはそんな姿を伝えたいとも思った。

 でも、この仕事に就いてジレンマを抱えた。スポーツ紙は暇つぶしに読むような娯楽紙であり、売れないと意味がない。「記者が伝えたいものを書く」ではなく「読者が読みたいものを記事にする」が基本スタンス。スポンサーからお金をもらって番組をつくるテレビ局も同じだろう。世間が求めない限り、“かっこいいパラ選手”を描くことは難しい。

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最終更新:5/10(水) 16:01

スポーツ報知