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「予想以上に対日関係を柔軟に考えている」文政権、外交で待ったなし難題 対北朝鮮、THAAD米中と摩擦 韓国新大統領

西日本新聞 5/10(水) 11:35配信

 韓国憲政史上初めて大統領を罷免された朴槿恵(パククネ)氏=収賄罪などで起訴=の後任を選ぶ大統領選が9日投開票され、革新系最大政党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)氏が当選を確実にした。韓国を巡っては、従軍慰安婦問題を象徴する釜山の新たな少女像で対日関係が再び悪化し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮政策では米国、中国との関係にもひずみが生じている。文氏には分裂した国家の統合だけでなく、外交でも待ったなしの難題が待ち受けている。

■世論を意識

 大統領選告示直前の4月中旬、文氏陣営でひそかに勉強会が開かれた。招かれたのは日韓関係を専門とする大学教授。公約で「慰安婦合意の再交渉」を掲げた文氏の外交担当者らに、教授は「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年末の日韓合意の重さを強調。北朝鮮の軍事挑発が強まる中、「今、日本との関係を悪化させるのは得策ではない」と説いた。

 外交担当者の一人は少し考えた後、「われわれは『合意を破棄する』とは言わない」と答えた。韓国では、世論調査で「元慰安婦の理解が得られていない」との理由で70%が合意に批判的。文氏をはじめ、大統領選の各候補はそうした世論を意識して日韓合意の再交渉、破棄を訴えたが、教授は「文氏陣営は、予想以上に対日関係を柔軟に考えている」との印象を持ったという。

 文氏は日韓合意を踏まえて、改めて安倍晋三首相が元慰安婦に謝罪の意を表明するなど「韓国の世論が納得するよう、合意内容を補っていく」方向で日本側と交渉する方針とみられる。ただ、日本外務省関係者は「そもそも韓国の次期政権に、そんな余裕はないはずだ」と読んでいる。

■不在5ヵ月

 「THAAD(高高度防衛ミサイル)の配備費10億ドル(約1100億円)は韓国が負担するのが望ましい」。選挙戦中盤の4月末、北朝鮮の弾道ミサイル対策で配備が進む最新鋭迎撃システムを巡るトランプ米大統領の唐突な発言が伝わった。韓国側は即座に否定、米国側も「世論を踏まえた一般論」と打ち消したが、THAAD配備に慎重な文氏に対する「けん制」(国会関係者)とみられた。

 THAADを巡っては、自国の監視強化につながるとして中国が猛反発。配備用地を提供したロッテグループが中国で展開する店舗約100店のうち74店が当局の「消防点検」を理由に営業停止に追い込まれている。韓国製品の不買運動も広がり、4月の現代自動車グループの中国販売台数は、前年同月の3分の1以下に落ち込んだ。

 米中に安全保障、経済で翻弄(ほんろう)される韓国には、朴氏が弾劾された昨年12月以降の大統領不在の間に「外交のテーブルから外された」(中央日報)との危機感が強い。

 韓国外務省は大統領選に先立ち、米国との首脳会談の準備に入った。7月にドイツで開催される20カ国・地域(G20)首脳会合を前に、新大統領とトランプ氏との信頼関係を急ぐためだ。「まず米韓同盟を固め、その上で中国、日本、ロシアとの関係構築を進める」(韓国外務省関係者)。10日に就任する文氏は、文字通り助走なしで外交の荒海に乗り出していくことになる。

=2017/05/10付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:5/10(水) 12:26

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