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「給食を受け取る器さえなかった」貧しさ原点 北朝鮮との融和目指す 故盧武鉉氏の「宿題」抱える文在寅氏

西日本新聞 5/10(水) 12:11配信

 韓国憲政史上初の大統領罷免劇の先頭に立ち続けた革新系最大政党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)氏が9日、大統領選で当選を確実にした。親子2代続けて大統領の座に座った朴槿恵(パククネ)被告=収賄罪などで起訴=と、巨大財閥サムスングループの経営トップ李在鎔(イジェヨン)被告=贈賄罪で起訴=との癒着事件に対する怒りの源流は、事件の主役たちとは対照的な生い立ちにある。

 「給食を受け取る器さえなく、友人から器のふたを借りて食べた」。文氏の自伝などによると、朝鮮戦争中、北朝鮮側から韓国に避難した両親は商売が不得手だったという。子どもの頃に裕福な家庭との格差を肌で感じ「世の中の不公平さを強く感じた」。大学進学後は軍事政権の朴正熙(パクチョンヒ)政権に反発する民主運動に身を投じ、2度拘束された。2度目の拘束中に司法試験の合格通知を受け取ったことはよく知られている。

「政治家になるつもりはなかった」

 弁護士駆け出し時代の故盧武鉉(ノムヒョン)氏との出会いが、自身の人生を大きく変えた。釜山に共同事務所を構え、無料で労働相談などに応じる「人権派」として汗を流したが、盧氏が政治家に転身して2003年に大統領に就任すると、請われて大統領府民情首席秘書官、秘書室長として支えた。

 「政治家になるつもりはなかった」はずだが、盟友の盧氏が、親族らの不正献金疑惑捜査中の09年に自殺。その葬儀を取り仕切った後、「彼が残した宿題で身動きが取れなくなった」と覚悟を決めて政界入り。以来、一貫して革新政党の中心に立って政権奪回を目指してきた。

 自らのルーツともいえる北朝鮮との融和を訴え、韓国社会のひずみや、経済格差を生み出した親日的な政権、財閥支配構造の見直しを訴え続けた半生。「被害者の理解が得られていない」として旧日本軍の従軍慰安婦問題を巡る日韓合意に反対するのも、そうしたぶれない考えがある。

「全国民の大統領になる」 文氏勝利宣言

 大統領選を制した文在寅(ムンジェイン)氏は9日午後11時45分ごろ、ソウル市中心部の光化門広場に姿を見せた。勝利宣言の場に選んだのは、朴槿恵(パククネ)前大統領の問題を追及するため、国民による「ろうそく集会」が昨秋から行われたメイン会場。今回の大統領選の原点とも言えるところだ。

 深夜にもかかわらず広場は支援者で埋め尽くされた。「ムンジェイン! ムンジェイン!」。何度も繰り返された支援者からの声援が、静まりかえった休日の街にこだまし、文氏も笑顔で両手を広げた。

 韓国国民が選んだ新たな指導者は語りかけるように話した。「私を支持しなかった方々にも仕え、統合する大統領になる。国民だけを見て、正しい道へ進み、偉大な韓国の誇らしい大統領になる」と力を込め、選挙戦での党派の対立を乗り越えることを誓った。

 本格的な選挙期間は約3週間。だが会場は、ろうそく集会から始まった半年以上にも及ぶ政治の混乱が、ようやく収束した喜びに包まれているようだった。

 広場を訪れた50代男性は「文在寅は経済格差を是正し、弱者に優しい社会を実現してくれるはずだ」と熱く語った。

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最終更新:5/10(水) 12:31

西日本新聞