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<京都市美術館>彫刻、10個に切断し撤去 「倒壊の恐れ」

毎日新聞 5/11(木) 7:30配信

 京都市美術館(同市左京区)が建物の再整備工事に伴い、屋外に設置してきた大型彫刻作品をバラバラに切断した上で、撤去する方針を示していることが関係者への取材で分かった。市は「地震による倒壊の恐れ」などを理由にしているが、形状から切断後の復元は難しいとみられ、美術界から「芸術の破壊行為」と批判の声も出ている。

 作品は、市文化功労者の表彰も受けた同市在住の彫刻家、富樫実さん(86)による「空(くう)にかける階段88-2」。高さ約11メートルの御影(みかげ)石の柱2本で造られている。1988年に2000万円で市が制作を依頼。美術館の前庭に展示され、来場者に長年親しまれてきた。

 33年開館の美術館は老朽化しており、市は今年4月から休館し、大規模改修や新館の建設を行う予定。展示作品の見直しを進める中で、富樫さんの作品の撤去計画が持ち上がった。

 市は作品について、震度6弱の地震で折れる可能性がある▽汚染が判明した前庭の土壌除去のため移転が必要▽安全な運搬には大きさ約2メートルに分割が必要--とし、作品を計10個に切断して保管する計画。リニューアル後に展示するかは未定という。市美術館の川口伸太郎副館長は「作品を大事にするのは当然だが、安全面を第一に考えなければならない。分割もやむを得ない」と話す。

 これに対し、富樫さんは「空へ伸びるところに作品のコンセプトがあり、切断されると全く意味が変わる。国内の同種作品で、これまで耐震性が問題になったとは聞かないが……」と困惑を隠さない。美術評論家の建畠晢・京都市立芸大前学長は「将来に残すべき価値がある彫刻。搬入時はそのままの形で運べたのだから『分割が必要』というのは理由にならない」と指摘している。【澤木政輝】

最終更新:5/11(木) 9:56

毎日新聞