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Googleが広告ブロックを検討? その理由とは

ITmedia ビジネスオンライン 5/11(木) 7:10配信

 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、米Googleを傘下に持つアルファベットは、同社が提供するWebブラウザ「Chrome」において、特定の広告をブロックする機能の導入を検討しているという(Googleはこの件についてコメントを控えている)。

【クリック数の伸びだけに依存する広告モデルにはいずれ限界が……】

 具体的にはポップアップ広告、音声付きの自動再生型動画広告、カウントダウンタイマーを表示する形式の広告などが該当する。

 これらの形式の広告はネット閲覧時に邪魔になることも多く、一部のユーザーに不快感を与えることは間違いない。にも関わらず、こうした広告が多用されているのは、クリック率が高いことの裏返しでもあり、広告主や広告代理店にとっては魅力的なツールということになる。

 広告とコンテンツについてどう折り合いを付けるのかは、ネット黎明期から続く問題だが、広告ブロックはその一つの解決策でもある。AppleはiPhoneに搭載されているWebブラウザ「Safari」において特定の広告をブロックする機能を既に搭載している。ユーザーは広告をブロックするアプリをインストールすることで、自動的に広告を表示しないようにできる。

 Appleの場合、あくまでメーカーであり、広告が主な収入源ではないので、利用者さえ望めばこうした機能を搭載することはそれほど難しくはない。だがGoogleは広告を主な収入源としている。このような業態の企業が広告ブロック機能を検討するというのは、一種の自殺行為である。

●広告単価を上昇させるメリットに?

 Googleが自らの首を絞めてでも、迷惑な広告の排除に動いているのは、従来型の広告モデルの限界を誰よりも理解しているからである。同社は2016年度には約902億ドル(約9兆9000億円)を売り上げているが、このうち広告が占める割合は9割近くに達する。Googleのビジネスはほとんどが広告に依存しているといっても過言ではない。

 Googleの売上高は単純に考えれば、広告単価と(広告への)クリック数をかけることで計算できる。広告単価が高ければ高いほど、クリック数が多ければ多いほど、同社の収益は拡大する。

 ところがGoogleが取り扱う広告の単価は下落が続いている。今後もスマホの普及でネットが生活インフラとしてさらに拡大するとともに、ネット広告がコモディティー化し、単価は下がっていくとみられている。

 2010年を基準にすると広告のクリック単価は既に6割まで下落している。一方、ネット利用範囲の拡大に伴ってクリック数は順調に伸びており、同じ期間で約4.5倍に拡大した。クリック数が4.5倍になり、単価が6割になったのでGoogleの広告売上高は理論上は2.7倍に増えた計算だ。単価が安くなっても、クリック数の増加がこれを補うという図式であり、実際、同社の広告関連の売上高は6年間で約3倍に拡大しており、理論値とほぼ一致している。

 ネット利用者数や利用頻度の増加が広告単価の下落を上回っている限り、Googleは成長を続けられるが、いつかはそれにも限界がやってくるだろう。クリック数の伸びだけに依存してきたモデルを見直さなければ、次の10年の成長シナリオを描くことは難しい。

 Googleの広告ブロックは、短期的には収益にマイナスかもしれないが、ユーザーの信頼感を高め、これが広告単価の上昇につながってくれれば長期的メリットになるというのがGoogleの見立てである。

●コンテンツビジネスに影響も?

 話は少し変わるが、今回のGoogleの広告ブロックが実現すれば、広告に依存してきたニュースサイトなどのコンテンツビジネスの流れを変えるきっかけにもなるかもしれない。その理由は、このところフィンテックが急速に普及してきたことで、クレジットカードなどでは到底実現できなかったローコストの超少額課金モデルが成立する可能性が高まってきたからである。

 大手ニュースサイトなど、コストのかかるコンテンツを提供する企業にとって、読者から直接、利用料金を徴収する有力手段は、今のところサブスクリプション・モデル(定額課金モデル)のみである。だが購読申し込みを受け付け、クレジットカードで課金させるまでのハードルは高く、一部の媒体を除いて、この定額課金モデルは普及していない。

 しかし、フィンテックを活用した超少額課金システムをブラウザなどに埋め込むことができれば、利用者は課金についてそれほど意識することなく、見たいニュースを閲覧するたびに、ごくわずかの購読料を支払うモデルが成立する可能性がある。少額課金のプラットフォームとして何が台頭するのかは現段階では何ともいえないが、技術的な基盤はほぼ確立しつつあるといってよい。

 PayPalやApple Pay、LINE Payのような決済サービスがローコストのコンテンツ課金事業に進出するというシナリオもあり得るだろう。LINEについては2017年1月からプレミア記事として有料ニュースの配信をスタートさせている。週刊文春のスクープ記事が読めるというもので、いわゆる「文春砲」を前面に打ち出したものだが、コンテンツ課金の新しいプラットフォームとして注目に値する。

 少額課金のシステムがニュースなどのコンテンツビジネスと親和性が高いのかも現時点では何ともいえない。だが、従来型広告に依存した収益モデルがいつまでも続かないことも確かである。これから先の数年間はコンテンツビジネスにとっては正念場となるだろう。


(加谷珪一)

最終更新:5/11(木) 7:10

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