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トランプ語は「人類」を救うのか(大げさか)

5/11(木) 8:21配信

ITmedia ビジネスオンライン

 2017年1月20日の就任から順風満帆――とは言えないドナルド・トランプ大統領。オバマケア(医療保険制度改革)を撤廃して修正する代替法案を撤回したり、イスラム教徒が多く暮らす6カ国からの入国禁止命令は連邦地裁によって執行停止されたり、苦しい状態が続いている。

【トランプ語は英語初心者にとっていい教材!?】

 現時点で、内政では、締結すらしていなかったTPP(環太平洋パートナーシップ協定)を離脱すると決めたくらいしかインパクトを残せていない。外交でも、北朝鮮のミサイル発射実験問題で米国や中国、日本や韓国の立場と現実が再確認されただけに過ぎないようだ。シリアに空爆を実施したが、もうすでに忘れ去られている。

 そんなトランプのトレードマークといえばTwitterによる発言だ。これまではその発言に注目が集まり、いちいち大きなニュースになっていたが、もはや世間は彼の発言に大して驚かなくなっている。例えば、3月28日に、ヒラリー・クリントンたちがロシアにウランが流れる契約をした、と事実誤認のツイートをしたが大きな問題になっていない。トランプでなければ大騒動になっていたはずだ。

 大統領という立場にもかかわらず、品格のないツイートは相変わらず続いている。4月1日には、米有名ジャーナリストをつかまえて「眠たそうな目」をしているとツイートしてバカにしたが、大して報じられなかった。もはや人々の感覚も麻痺(まひ)していると言っていい。

 とにかく、相変わらず言いたい放題のTwitterで国民にメッセージを送り続けるトランプ。内容の真偽はさておき、実は彼の言葉は、もしかしたら人類にとってプラスになるかもしれないのだ。

 どういうことか。まず前提としてトランプの言葉について説明したい。

●トランプ語は小・中学生並み

 2015~2016年の大統領選で、時々話題になったのがトランプの使う「シンプルな英語」だ。彼の英語は理解しやすい簡単な英語であり、それがトランプ勝利の一因になったとまで言われている。事実、ワシントンポスト紙によれば、米国民の40%以上が基礎的な英語能力しかないと指摘しており、トランプがその数字を知っていたのかどうかは分からないが、多くの人が理解できる言葉で話したことで大衆の心をつかんだ。

 そんなトランプの英語は今では「Trumpese(トランプ語)」などと揶揄(やゆ)されている。ただこれ、反トランプ派がトランプを貶(おとし)めるために言っているのではなく、大学の研究によって証明されているのだ。米国の名門大学であるカーネギーメロン大学が行なった調査によると、トランプの英語は小・中学生並みであるという結果が出ている。

 そんなトランプ英語が今、世界で英語を学ぼうとする人たちに重宝されているという。米メディアなどによれば、彼の低レベルな英語が、英語を学び始めたばかりの外国人などに役に立っている。Facebook上では言葉を学習している人たちのグループなどで、トランプ語の有益性が議論され、にわかに盛り上がっているのだ。

 トランプ語の何が有益なのか。米Wired誌によれば、特にトランプの使用する単語は簡単なものが多く、言葉を繰り返し述べる傾向があり、議論もシンプルなのだという。しかも彼の話す英語はスピードが比較的遅い。そのために、英語の聞き取りに慣れていない人にとっては、使い勝手のいい“教材”になっているというのだ。

 英語に限らず、言語を学ぶ際、単語が聞き取れない状態ではやる気すら出ないだろう。単語や文章などが耳に入ってくるようになると、学ぶことも楽しくなるし、学習を続けようという気になるものだ。そこで毒ばかりだと見られていたトランプ語に価値がある、とみられているのだ。

●トランプ語は学術的に低レベル

 となると、トランプのツイートを1冊の本にまとめて、英語のテキストに……と考える人もいるはず。しかし、Wired誌によれば、そこそこ英語を使える人がトランプ語から学べることは少ないという。というのも、カナダのトロント大学の言語学者いわく、中級以上の言語学習者はボキャブラリーの数を増やす必要がある。語彙(い)力を鍛えるには、彼の英語は不十分だということだ。

 ちなみにトランプ語を他の言語に訳す世界中の翻訳家たちは、彼の発言に出てくる紛らわしい理屈やころころ変わる話、さらには事実誤認に苦労させられている。また下品な単語を使うこともあるので、発言を選り好みできないニュース翻訳家たちは頭を痛めているという。トランプ語にはそういう側面もある。

 とにかく、トランプの英語が、学術的に低レベルと証明され、それゆえに英語を学び始めた人たちに重宝されているというのは分かった。ではそれがどう人類にプラスになるのか。

 人類というと大げさに聞こえるが、第2言語として英語を学ぶことで私たちの脳の機能と健康が向上するというのだ。実は最近、新しい言語を学ぶことが人の健康に有効であるという研究が世界的に話題になっている。

 どんな効果が見込まれるのか。母国語以外の別の言葉を話すバイリンガルの人は、例えば、アルツハイマー病の発症が5年ほど遅くなると言われている。さらには、脳卒中などによって起きた認知機能も、バイリンガルの人のほうが回復する確率は2倍であるとの研究結果も出ている。

 また第2言語を習得することは、一般的な脳機能を向上させる。米国立衛生研究所は、マルチタスクの能力が高まるとの研究結果を発表しているし、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の研究では知覚の感度も高くなるという。また英エジンバラ大学の研究でも、第2言語が認識力を高めるとし、脳の機敏性が高まるそうだ。

 つまり、健康のために外国語を学ぶべきで、特に学べる機会が多く、世界中で使えるという実益も考えると英語を学ぶのが手っ取り早い。そして英語を学ぶには、トランプ語から入るのがとっつきやすく、勉強になるという。この流れを見れば、トランプ英語が人類に役立つ可能性があるということだ。

●トランプ語の特典

 「そんなのこじつけだ」と突っ込まれるかもしれないが、ここで言いたかったことは、言葉を学ぶことが健康につながる可能性があるということだ。しかも、ビジネスパーソンにとっては別の言葉が話せることは、仕事でも大きな武器になる。事実、ある試算によれば、第2言語の習得は、40年間で最大12万8000ドルの価値をもたらすと言われている。それに脳の活性化で仕事がうまく回り、健康効果なども期待できるとあれば、学習して損することはない。

 英語を学ぶなら、トランプ語を見聞きすることがいいスタート地点になるかもしれない。そうすれば、トランプが巻き起こす米国の混乱ぶりと彼の迷走ぶりがもれなく学べるという、特典も付いてくるのである。

(山田敏弘)