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【夢を追う】プロボクサー・黒木優子さん 「飲酒運転撲滅」を叫ぶ

産経新聞 5/11(木) 7:55配信

 《ある女性との出会いをきっかけに、飲酒運転の撲滅運動に取り組むようになった》

 山本美也子さん(48)は平成23年2月9日、福岡県粕屋町で起きた飲酒運転事故で、息子の寛大(かんた)君=当時(16)=を亡くされました。

 事故の後、私の父が福岡県警粕屋署の副署長になりました。

 そのころ、山本さんら事故の被害者が立ち上がり、飲酒運転撲滅を目指した啓発CMを作ろうとされていました。

 「ファイトマネーを、ここに寄付したら良いんじゃないか」

 父からこう言われ、「良い話だね。する」と同意しました。

 この年3月には東日本大震災も起きました。わずかな金額でしたが、山本さんと東北の被災者に寄付しました。

 すると、父はまた言うのです。

 「たった1回寄付するだけではだめだ。どんな事故だったかを知り、ご遺族とも関わるべきだと思うよ」

 すぐに家族で事故現場に行きました。見はらしの良い一本道です。「なぜこんな所で」と言葉を失いました。酒さえ飲んでいなければ、何の問題もない道路に思えました。

 将来、愛する自分の息子が突然、事故に巻き込まれ、亡くなってしまったら…。そう想像しました。私は悲しみに打ちひしがれ、何もできないでしょう。

 でも山本さんは悲しみを乗り越えて、各地を講演で回っています。「飲酒運転は無差別殺人です」と、飲酒運転撲滅を呼びかけています。なんて強い人なんだろうと尊敬しました。

 啓発CMの試写会にも参加しました。身近に接した山本さんは、温かな心を持つ「日本のお母さん」って感じの人でした。

 改めて飲酒運転への怒りがこみ上げました。何かお手伝いをしたい。私も世の中に訴えようと、思うようになりました。

 ボクサーパンツに「STOP!! 飲酒運転」の刺繍(ししゅう)を施しました。試合に勝てば、リングの中央のマイクパフォーマンスで「飲酒運転撲滅」と呼びかけます。

 たまに勝利で舞い上がって、忘れることもあります。そんなときは母がリングサイドから「優子、飲酒運転撲滅だよ」って教えてくれます。それではっとわれに返るのです。

 《バレンタインデーが近いので、寛大さんの命日にはチョコレートを仏壇に供える》

 試合の前にもお参りに行き、手を合わせます。寛大君にも勝利を約束するんです。「よしっ」と気合が入ります。山本さんも毎試合、最前列で観戦してくれます。

 昨年12月の5回目の防衛戦では、リングのコーナーポストにも「STOP!! 飲酒運転」の文字をあしらいました。

 今年2月、福岡市東区香椎浜のショッピングモールで、飲酒運転撲滅の啓発活動に参加しました。山本さんが代表を務めるNPO法人「はぁとスペース」が5月25日に発行するフリーペーパーに、飲酒運転撲滅を訴えたインタビュー記事が掲載されます。

 福岡では寛大君の事故の前の平成18年にも、飲酒運転の車に追突され、幼児3人が死亡する痛ましい事故がありました。飲酒運転への厳罰化は進みましたが、違反者は後を絶ちません。「飲んだら乗るな」。当たり前のことです。それができないのは、甘えでしかありません。

 最近は運転手からアルコールを検知すると、エンジンがかからない車も出ています。

 福岡はもちろん、全国に、世界に、飲酒運転撲滅の輪を広げる。私はそのためにも、負けるわけにはいかない。

 飲酒運転をゼロにできるか。厳しい現実があると思います。それでも、できることは生涯をかけて、やる。山本さんは飲酒運転と戦う。ずっとこの先も。私も同じです。飲酒運転撲滅への志は、全くぶれません。

最終更新:5/11(木) 7:55

産経新聞