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韓国・文大統領が就任 新首相サプライズ 対日関係改善模索を印象付け

産経新聞 5/11(木) 7:55配信

 【ソウル=名村隆寛】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日の就任直後に李洛淵(イ・ナギョン)・全羅南道(チョルラナムド)知事(64)を首相候補に指名した。李氏は韓国政界での“知日派”として知られ、日本の政界や外交関係者にも知己が多い。日韓関係に関わる者には、まさにサプライズ人事だ。

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 9日投開票の大統領選で勝利した文氏は、特に全羅道で圧倒的な票を集めた。李氏の起用は全羅道を十分に意識したものだ。

 しかし、真意はともかく、日本側には“反日”のイメージが強い文氏が、日本を熟知した李氏に白羽の矢を立てたことで、対日関係改善を意識した人事だと印象づけることができる。

 文氏は選挙期間中、外交ブレーンに金基正(キム・ギジョン)・延世(ヨンセ)大学教授を起用。金氏は2015年の慰安婦問題をめぐる日韓合意について「再交渉という表現は使わず、(日本政府も応じやすい)後続措置ということで問題を解決する」との個人的な案を明らかにしており、現実的な日韓関係の重要性は熟知している。

 ソウルの外交筋は、文政権の対日外交について「いきなり露骨に強硬な姿勢では臨まないだろう」と展望する。文氏が慰安婦問題など「歴史認識」をめぐる問題と経済などを切り離す日本との「ツー・トラック外交」を掲げているためだ。しばらくは外交手法を静観する必要性を指摘する。

 ただ、知日派の起用が日韓関係を一朝一夕に改善させるかは疑問だ。文氏が9日深夜の勝利宣言をしたソウルの光化門(クァンファムン)広場の特設会場には、与党となった左派系の「共に民主党」の秋美愛(チュ・ミエ)党代表や同党に所属する朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長、李在明(イ・ジェミョン)・城南(ソンナム)市長らも舞台に並び文氏の勝利を祝福した。

 歯にきぬ着せぬ発言で一時“韓国のトランプ”ともてはやされた李在明氏は、日本を「敵性国家」と呼び、日韓合意の破棄を強硬に主張。秋氏と朴氏は昨年12月末、ソウルの日本大使館前で開かれた慰安婦問題の抗議集会に参加し、いずれも日韓合意の無効化を強く訴えた。

 文氏を支えるのは、こうした反日強硬派が主流だ。しかも、日韓合意の精神に反し、昨年12月に釜山の日本総領事館前に不法設置された慰安婦像への日本政府の抗議にも、敵意をむき出しにした。

 外国公館前での侮辱行為を禁じたウィーン条約に違反していようが、意に介していない。日韓合意というゴールポストも韓国側では常に移動可能なのだ。

 自ら慰安婦像を訪れるなどした文氏の反日的な言動について、世論を意識した「選挙用」だとする見方がある。ただ、文氏は像を設置した人々や像の撤去に反対する世論の支持を得て大統領に当選した。公約に日韓合意の再交渉を掲げた以上、文氏としては有権者との約束は破れない立場にいる。

 公約通りゴールポストを動かし、日韓関係を一層悪化させるのか、一転し慎重に対日関係改善に進むのか。自らの公約が文政権の対日外交の足かせとなる可能性は否定できない。

最終更新:5/11(木) 8:07

産経新聞