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<イスラエル>医療機器市場に活気 軍事技術、転用企業続々

毎日新聞 5/11(木) 21:38配信

 高度な軍事技術を背景に情報技術(IT)や人工知能(AI)の開発で世界をリードし、「中東のシリコンバレー」と呼ばれるイスラエル。高精度センサーなどを活用した最先端の医療機器開発でも世界トップクラスの水準を誇る。近年は新興国市場もターゲットに、スマートフォンなどを活用した健康管理システムの開発、実用化を積極的に進めている。【テルアビブで高橋慶浩】

 イスラエル最大の商業都市テルアビブで2年に1回開く医療機器の大規模な展示会「メッド・イン・イスラエル」。3月上旬に行われた同展には、ベンチャー企業を中心に100を超える企業・団体が出展した。会場には新事業のシーズ(種)を探そうとする国内外の企業関係者や投資家の姿も目立ち、新製品の見本市というよりも、ベンチャー企業と投資家をつなぐ「出会いの場」という色彩が濃かった。

 目玉となっていたのが、スマホなどの通信技術を活用して手軽に健康管理を行えるシステムや機器。「経済成長が続く中国などは今後、生活習慣病が増えると見込まれ、健康管理システムの需要も伸びる」(イスラエルの医療関係者)とみているためだ。

 ◇スマホで健康管理

 ベンチャー企業「シノガメディカル」社は、左手の指先に測定機器を付けるだけで、血糖値や血圧、心拍数など10種類以上のデータを測ることができるシステムを開発。測定結果をスマホを通じて同社のインターネット上のサーバーに送れば、日々の数値の推移をグラフで確認したり、必要に応じて医師に送ったりできる。

 アフリカやインドなど、医師が不足する地域で遠隔治療システムの展開を目指すのは「イキュアテル」社。電話機能とタッチパネルを備えた電子端末に、血糖値や血圧、心拍などを測る機器を付属したシステムで、利用者は測定データを医療機関に送信できるほか、タッチパネルで遠方にいる医師の診察を予約。テレビ電話を活用して遠隔診断もしてもらえる。

 ◇カメラで便を監視

 便器の内側に特殊なカメラを取り付け、日々の排せつ物を撮影して健康状態を監視・分析するユニークなシステムも来場者の関心を集めていた。開発した「アウトセンス」社によると、便の色を高精度カメラで読み取り、スマホ経由で同社にデータを送って分析してもらう仕組み。便に含まれる血液の変化から大腸がんの早期発見などに役立てることを目指している。現状は試作段階だが、ヤアラ・カップ・バルネア最高経営責任者(CEO)は「毎日監視するので、精度の高い検査ができる」と早期の実用化に自信を示した。

 イスラエルはもともと、医療ベンチャーが盛ん。薬のようにのみ込むと、体内から画像を送信するカプセル型内視鏡を開発し、世界的なシェアを持つ「ギブン・イメージング」社などが有名だ。

 医療ベンチャーが育つ背景には、イスラエルが中東最大の紛争地域に位置していることがある。敵対国に囲まれ、国防力を高める必要から軍事や救急医療の技術が発達。その技術を民生に転用して高度な医療機器を開発する企業が相次いで誕生している。ギブン社のカプセル型内視鏡もカメラ付きミサイルの技術を転用したものだ。

 ベンチャー企業を支援する公的機関、イスラエル国産業技術開発センターの職員は「成功したベンチャー企業を外国資本に売却し、その利益で新たに起業するケースが多く、技術革新につながっている」と話す。

 【キーワード】イスラエルのベンチャー企業

 イスラエルは国土面積は約2.2万平方キロメートルと日本の四国ほどで、ユダヤ人など約860万人が暮らす。中東地域に位置するが産油国ではなく、天然資源は乏しい。

 アラブ諸国などとの度重なる紛争を背景に軍事技術が発達。それをバックボーンに成長した通信機器などハイテクや医薬品、医療機器ビジネスは主要な輸出産業となっており、国内総生産の約15%を占めるとされる。

 国民には兵役義務があるが、理工系の優秀な学生らは軍の研究開発部門に配属されることが多い。兵役中に専門性を高めた若い世代が起業するケースも少なくない。政府関係者によると、16年のベンチャー起業数は約1400社にのぼる。

最終更新:5/11(木) 23:26

毎日新聞