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妻殺しの証拠はFitbit? IoTウェアラブルデバイスが「電子の足跡」になる日(前編)

THE ZERO/ONE 5/11(木) 12:03配信

今年4月、米コネチカット州在住の40歳の男性が妻を殺害した罪で起訴された。事件が発生した当時、男は警察の調べに対して「家に不審者が侵入し、彼女に発砲した」と証言していた。しかし妻が身につけていたFitbitの記録と、男の証言との間には、いくつかの大きな食い違いがあった。

フィットネストラッカー「Fitbit」

Fitbit社の「Fitbit」シリーズは、IoTのウェアラブルデバイスを代表する製品のひとつだ。スマートフォンやPCと同期し、ユーザーの歩行やトレーニング、睡眠状態などの様々なデータを記録する。北米のみならず世界中のユーザーに愛用されている大ヒット商品だ。近年ではXiaomiやAppleによる猛追を受けているため、以前ほど人気を独占している状態ではないが、昨年(2016年)もどうにか「ウェアラブルデバイスのトップシェア」の座を守り抜いた Fitbitは、健康志向の人々にとってすっかりお馴染みの商品となっている。

そして2015年に殺害されたコニー・デベイトも、Fitbitとスポーツジムを積極的に利用している健康志向の米国市民の一人だった。

夫の証言とFitbitが語る真実

この殺人事件は2015年12月23日の朝に発生した。殺害されたコニーはリチャード・デベイトの妻で、2人の子供の母親でもあった。彼女が殺害された当初、夫のリチャードは警察に対して次のように説明していた。
 
・朝8時半ごろ、私は出勤のために家を出たのだが、ノートパソコンを忘れてきたことに気づいた。それを取りに戻って、家に着いたのは朝の8時45分から9時ぐらいだった。
・自宅に入ると2階で物音がした。飼っている猫だろうと思って様子を見に行くと、そこには身長6フィート2インチ(約188cm)ほどの、ずんぐりした体型の大男がいた。彼は迷彩服を着ており、顔には覆面をつけていた。俳優のヴィン・ディーゼルの声に似た低い声で話す男だった。
・そのとき妻が外出先から戻ってきたので、私は妻に「逃げろ」と叫び、侵入者を取り押さえようとした。しかし彼は、ガレージと繋がっている地下へ降りて行き、妻に発砲した。時間は9時ごろだった。
・その後、覆面の男は私を金属製の椅子に縛り付けると、たいまつを使って私に拷問しはじめた。しかし私は「縛られていなかった右手」を使い、たいまつで彼の覆面に火をつけた。
・そして私はどうにか警報システムのボタンを押したあと、10時から11時ごろに携帯電話を使って911(日本の110番/119番)に連絡することができたのだが、すでに犯人は逃走していた。
これだけで「怪しい」と感じた方は多いだろう。作り話としても荒唐無稽なので、かえって本当なのではないかと深読みしたくなった方もいるかもしれない。しかし現実は、それほど面白くもない。警察の捜査で分かったことは次のとおりだ。
 
・同日の朝9時4分(証言によればリチャードが車に乗っているはずの時間)、リチャードは自分のPCから「事情があって仕事に遅れる」という内容のメールを上司に送っていた。それが自宅から送られたメールであったこともIPアドレスから判明している。
・9時18分、リチャードは同じPCを使って、コニーが通っているスポーツジムのウェブサイトにアクセスし、スケジュールのページを閲覧していた。このときも彼は、自宅でインターネットに接続している。
・9時18分、運動を終えてジムを去るコニーの姿が、監視カメラに撮影される。このときコニーは携帯電話で誰かと通話していた。それは彼女の携帯電話の通話記録にも残っている。
・それからコニーは車に乗ったので、彼女が身につけていたFitbitは一旦アイドル状態になる。そして9時23分に再びアクティブとなった。これは「彼女がドライブを終えた時間」、つまり自宅に着いて車を降りた時間だったと考えられる。
・9時40分から46分の間、コニーは自分のiPhoneを利用してFacebookにログインし、2つの動画を投稿し、さらに友人宛てのメッセージも送っていた。このとき彼女は、自宅のインターネット接続を利用していたことがIPアドレスで確認されている。つまり彼女は、ジムから帰宅したあと自宅でFacebookにアクセスしていた。
・コニーのFitbitが「持ち主の最後の動き」を最後に記録したのは10時5分。それは彼女が殺害された時間だったと考えられる。その記録によれば、彼女は車を降りてから殺害されるまでの間に、家の中を1217フィート(約370メートル)歩き回っていた。

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最終更新:5/11(木) 12:09

THE ZERO/ONE