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「知日派首相」起用に望み 文大統領の韓国「外交のバランスを考えているのでは」

西日本新聞 5/11(木) 14:59配信

 韓国で約9年ぶりとなる革新政権が動きだした。大統領選を制した革新系最大政党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)氏(64)は10日、第19代大統領に就任し、新首相など大統領府の主要人事を発表した。前大統領が起訴されるという混迷の中、国の再起に向け、文政権はどんなかじ取りを見せるのか。

 「これでパイプがつながったという思いだ」。日韓議員連盟幹事長を務める河村建夫元官房長官は10日、安堵(あんど)の表情を浮かべた。注目していたのは韓国の新首相人事。島根県・竹島に上陸したり、従軍慰安婦問題を巡る2015年の日韓合意の見直しを訴えたり反日姿勢が目立つ文氏だが、指名したのは知日派の李洛淵(イナギョン)全羅南道知事(64)だった。

 大統領選を控えた4月初め、東京で李氏と会った小此木政夫慶応大名誉教授は、冷え込む日韓関係を心配する姿を覚えている。「文大統領になったら、私がアドバイスしないといけない」。李氏は真剣な表情で語ったという。小此木教授は「首相に相談すれば、大統領に話が伝わる。これが大切だ」と強調した。

 昨年末に釜山の日本総領事館前に慰安婦問題を象徴する少女像が置かれ、日本政府は抗議の意味で今年1月に長嶺安政駐韓日本大使を一時帰国させた。大使は4月に帰任したが、少女像撤去などを求めて面会を要請した韓国側の閣僚には、会えない状況が続いた。

 ぎくしゃくした雰囲気の中、発表された「知日派首相」起用。日本外務省関係者は「外交のバランスを考えているのではないか」と前向きに受け止める。

「まずは信頼関係の再構築からだ」

 ただ、あまり楽観はできない。

 韓国では、文氏が李氏を起用したのは、国会戦略が狙いとの見方が強い。李氏は民主党で文氏と距離を置くグループに所属し、同党から分裂して40議席を持つ中道「国民の党」の複数の幹部と親しい。国会で過半数(151議席)を下回る119議席の少数与党、民主党の勢力を補うため、李氏には「党内結束に加え、国民の党を取り込む『橋渡し役』になる役割が期待されている」(国会関係者)という。

 慰安婦問題の行方も不透明だ。文氏が国会で大統領就任の宣誓をした10日昼、大統領府に近い日本大使館前で、元慰安婦の支援団体が定例の集会を開催。日韓合意の再交渉を公約に掲げた文氏に、元慰安婦への支援金の原資として日本政府が韓国に拠出した10億円の返還などを迫った。団体幹部は参加した約120人を前に「文政権に強く訴えていく」と息巻いた。

 慰安婦問題をきっかけに悪化した日韓関係が、北朝鮮対策の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)など安全保障や経済活動に波及する懸念もくすぶる。選挙戦で文氏側に対日関係をアドバイスした韓国の大学教授は「まずは信頼関係の再構築からだ」と指摘する。日韓のパイプ役となる李氏を「互いにうまく利用すればいい」と力を込めた。

=2017/05/11付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:5/11(木) 14:59

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