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仕事に集中できない? 視覚的ノイズも原因

ウォール・ストリート・ジャーナル 5/11(木) 12:52配信

 従業員間のやりとりや協業を促そうとオフィスの壁やパーティションを取り払った企業の一部は、やり過ぎたと感じているようだ。オープンスペースという社会工学的アプローチは、従業員の集中を妨げ、パソコンの画面から視線が離れる結果を招いているというのだ。

 従業員の視界の隅に入る何らかの動き、つまり「視覚的ノイズ」は集中を妨げ、分析的思考や創造性を発揮する邪魔になり得ることが研究で示されている。

 企業は長年、オープンな職場で耳障りとなる音を抑えるよう努力してきたが、最近は一部で視覚的ノイズの対策も行われるようになっている。植物を置く、壁の色を暗めにするなどのローテクな対策もある。

 「人間用のブラインダー(競走馬などに使われる遮眼帯)があれば良いのに」。サンフランシスコのソフトウエア会社セグメントで働くマヤ・スピバックさんは昨年、会社の調査で職場環境について聞かれた際、半ば冗談でそう回答した。近くに座る同僚の動きを視界から排除するのは困難で、「ほとんど集中できなかった」という。

 そこでセグメントは先月にオフィスを移転した際、社内のレイアウトを刷新した。ピーター・ラインハート最高経営責任者(CEO)によると、以前のレイアウトは倉庫のような感じだった。「列のように見渡すことができ、同僚がそばを通ったり、話し合ったりしているのが認識できる空間だった。信じられないほど気が散る場所だった」という。

 新しいオフィスにもオープンな作業空間はあるが、レイアウトは迷路に近い形なった。壁やコーナーを設けたほか、鉢植えの植物を置いたり、上からつるしたりした。その結果、従業員のデスクがそばを通る人から見えなくなった。ラインハートCEOによれば「ほぼジャングルのような」職場だ。

 同じような作業パターンを持つ同僚に囲まれると、従業員は安心感を覚えるかもしれない。しかし、プリンストン大学のサビーン・カストナー教授(神経科学・心理学)によれば、予想できない動きが視界の片隅に入ると、それが認知資源(脳の認知活動に必要な力)をめぐって争うことになるという。視覚的刺激を排除する能力は、人によってさまざまだ。人が多くて雑然としたオフィスでは集中できない人もいると同教授は指摘する。

 イリノイ州のコンサルティング会社、デザイン・ウィズ・サイエンスの代表を務める環境心理学者、サリー・オーガスティン氏は、「われわれは、たくさんの人が集まっているのが周辺視界に入ると、『何を話しているのだろう』と思う傾向がある」と語る。「『誰かが解雇されたのだろうか。私に解雇を告げようとしているのだろうか』などと思ってしまうのだ」

 建築・設計を手掛けるEYPアーキテクチャー・アンド・エンジニアリングの専門家、リー・ストリンガー氏は、一部の従業員は、上司や同僚から見えることで、他者からの期待に沿わなければならないというプレッシャーを感じる場合があると述べる。

 ハーバード大学経営大学院のイーサン・バーンスタイン助教(リーダーシップ・組織行動学)は、2012年に発表した中国の工場労働者に関する調査で、カーテンをかけて作業が監督者から見えないようにすると、チームの生産性が10~15%上がることを突き止めた。従業員たちは、上司の批判的な目がないと、問題解決や効率改善のために新しい方法を試すことをためらわなくなるという。

 米国のオフィスビル303棟で働く4万2764人を対象に実施された研究によると、デスク間の仕切りが低い、または全くない職場の従業員からの苦情で、聴覚的ノイズに次いで2番目に多かったのは、視覚的なプライバシーの欠如だったという。

By Sue Shellenbarger

最終更新:5/11(木) 12:52

ウォール・ストリート・ジャーナル