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「借り物の概念」を反映した 巨大な公共建築は都市を阻害するのか

5/21(日) 10:10配信

THE PAGE

 巨大建築は、計画時から完成までの期間に、経済情勢や社会の空気が大きく変化してしまうことがあります。例えばバブル経済の終焉をまたいで登場した公共建築は、その後の都市にどのような影響を与えたのでしょう。

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 建築家であり、多数の建築と文学に関する著書でも知られる名古屋工業大学名誉教授、若山滋氏が日本の巨大な公共建築と都市文化を考えます。

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バブル経済の遺産

 マンハッタンにそそり立つエンパイアステート・ビルもクライスラー・ビルも「黄金の20年代、狂乱の20年代」と呼ばれた好景気時代に計画され、ウォール街の大暴落(1929)後に竣工したものである。これに似て東京に、バブル経済の最盛期に計画され、翳りが出はじめた頃に竣工した、二つの巨大建築がある。どちらも都庁関係だ。

 一方は、新宿の新東京都庁舎(1991竣工)であり、もう一方は、旧都庁舎の跡にできた東京国際フォーラム(1996竣工)である。

 いずれも御影石をふんだんに使った巨大で豪華な建築であり、まさにバブル時代の遺産という印象だ。ある高名な建築家はこれを「粗大ゴミ」という言葉で表現した。巨大な石の壁はどんなに工夫を凝らしても、近くにいる人間を圧迫する。多額な税金を使ったのだから、その意味でも正当な批判であったかもしれない。

歩行交通の要

 しかし筆者は最近、新都庁舎には相変わらず批判的であるものの、東京国際フォーラムには好印象を抱いている。

 第一に、歩行交通の結節点としての役割があることだ。
 通常、都市の中の巨大建築は、歩行交通の邪魔になり、街並み形成を阻害するものだが、この建築はその内部に、地上においても、地下においても、有楽町から東京駅方面への南北の動線と、皇居から銀座方面への東西の動線が確保されており、周辺を歩く人にとって非常な便益を与えている。

 第二に、その動線となる空間が、建築と緑とオブジェに囲まれた居心地のいい外部と、自然の光にあふれた居心地のいい内部となっている。内部のように守られた外部空間と、外部のように開かれた内部空間は、建築を魅力的にするコツだが、それが見事に実現している。こういったことはホールとギャラリー、ロビーを地下と空中で結び、地上を広場として解放する、つまり巨大建築の内部空間を立体的に構成することよって実現した。

 第三に、ガラスで囲まれたラグビーボール型のロビーは、日本の建築には滅多に見られない規模で、特に天井の高さが、圧倒的な解放感を与える。船をイメージしたという構造体がそのまま装飾的な役割を果たし、実際、船を下から眺めているような、いわば海の底にいるような気分になるのだ。

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最終更新:5/27(土) 6:08
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