ここから本文です

MUCC 結成日に地元茨城で20周年ライブ 「関わってくれたすべての人達に心から感謝」

5/12(金) 12:45配信

エキサイトミュージック

初めてライブをした1997年5月4日から、地元である茨城水戸ライトハウスを中心に活動を始めたMUCCは、2017年5月4日に20回目の誕生日を迎えた。彼らは、バンド結成から20周年という節目のライブを行うため、地元の茨城県立県民文化センター大ホールを選んでいたのだが、それは、単なる凱旋公演ではなく、20年という歴史を築いてこれたMUCCというバンドの現在と、自らの過去を対面させるための特別な想いからだったのだ。

【この記事の関連画像をもっと見る】

彼らがここに立つのは2007年11月25日の10周年記念ライブ『MUCC 10th Anniversary Memorial Live“家路”』以来、実に10年ぶりであった。当時は、オープニングに「残酷な天使のテーゼ」を用い、『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジ役である緒方恵美氏の影アナで意表を付くなど、何かとサプライズを仕掛ける彼ららしい演出はあったものの、子供の頃から在った憧れの地元大ホールでのライブということもあり、等身大の自分たちで向き合った純粋な凱旋公演だった。

そこからさらに10年。オーディエンスを楽しませる技量が増した彼らは、確実に“この日、この場所でしかできないライブ”を残したと言えるだろう。

10分押しで始まったライブは、会場備え付けの開演ブザーを合図に、緞帳がゆっくりと上がるというクラッシックなオープニングからスタートした。頭から暴れる覚悟で構えていたオーディエンスにとっては、少し拍子抜けな始まり方であったことだろう。しかし、緞帳の向こうに見えて来たのは、ナント、教卓と4つ並んだパイプ椅子と、天井から吊り下げられた「MUCC成人おめでとう」と書かれた看板だった。彼らはこの日のライブを成人式に見立てていたのである。

メンバーの思惑を察したオーディエンスは、その光景に“おめでとう”の言葉と拍手を贈った。影アナによって呼び込まれた紋付羽織袴姿の逹瑯(Vo)、YUKKE(Ba)、SATOち(Dr)は静粛にステージに並ぶも、ミヤ(Gt)はド派手な羽織袴姿で場内から遅れてプロレス入場し、あげくステージによじ登るという、昔ヤンチャだった頃そのままを再現した演出でオーディエンスを楽しませた。この成人式には、水戸市マスコットキャラクター「みとちゃん」から納豆の贈呈や、“MUCC村の村長”としてムック(ひらけ!ポンキッキ)から祝辞が述べられた。

成人式を終え、いよいよライブの本編がスタートした。その始まりは「アカ」。紗幕の向こうで奏でられる彼らの初期曲にオーディエンスは聴き入った。2曲目に置いた「ファズ」へと曲が移ると、ナント、ミヤとYUKKEがステージ後方から勢い良く飛出し、逹瑯がステージ下からゆっくりと迫り上って登場。意表を突かれたオーディエンスはさらに大きな歓声を寄せた。「アカ」でダミーを立て、裏で本人たちが演奏をしていたというカラクリだったのだ(※SATOちは移動不可能なためダミーではありません)。

とにかくオープニングから遊び心満載でオーディエンスを楽しませたMUCCだったが、この日は過去曲だけを中心に届けていくというノスタルジックなものでもなく、最新楽曲と、普段のライブではあまりやることのない旧曲たちを実に上手く構成したセットリストで“現在のMUCC”を見せつけてくれた。

この日、特別な演出で魅せたのは「砂の城」。ゲストキーボーディストの吉田とおるのピアノ伴奏と、ミヤのアコースティックギターに乗せて届けられたこの曲は、激しくディープな音を放つパブリックイメージからはかけ離れた、実にフォーキーな雰囲気で唄い上げられたものだったが、これぞ彼らが原点、サウンドと同じく重んじる歌詞に用いた言葉の運びの美しさが、しっかりと聴き手に届いた時間であったと言える。そして、彼らは何よりも、この日、この場所に響かせたかった楽曲であったに違いない「家路」へと音を繋げたのである。

何もかもが自由で、手放しでそのすべてを楽しむことができた古里の中の自分を思い返しながら、都会や社会に揉まれ、いつしか“その頃”のように笑えなくなった自分へと問いかける、誰もが重ねることができる、戻ることのできないかけがえのない時間と現在の自分との間にできた距離が歌われたこの曲は、彼らが21歳の頃に作った楽曲である。さらにそこから歳を重ね、“無くしたくないものがある”時代から、また一層距離ができたことで、説得力が増していた気がしてならなかった。また、水戸という場所で聴けたことも、より情景を鮮明に浮かび上がらせたのだろうと思う。

ここから繋がれたMCでは、5月1日に『石岡市ふるさと大使』と、『水戸大使』へのダブル就任したことを改めて報告し、石岡市と水戸市を全力で盛り上げていくことを誓った。

そしてアンコール。彼らのサプライズはまだまだ終ってはいなかった。アンコールではSATOちがヴォーカル、YUKKEがギター、逹瑯がベース、ミヤがドラムというパートチェンジで「世界の終わり」と「蘭鋳」を届け、その後に、MOON CHILDの「ESCAPE」、LUNA SEAの「Dejavu」、16歳の頃に作ったという「NO!?」が届けられた。「ESCAPE」前に流れたSEも、カバー曲の選曲も、顔に“神”のペイントを描いた逹瑯の出で立ちも、20年前の島村楽器 水戸マイム店 Aスタジオ(通称 マイチカ)でやった初ライブの完全再現であったというから、そのこだわりたるや脱帽である。

そして彼らはこの日のラストを、最新アルバム曲の1曲目「脈拍」で締めくくった。この曲を飾った今作のヴィジュアルドロップが、誇らしげに4人を見守る中、ミヤのつま弾くギターの音に、逹瑯は“今日まで関わってくれたすべての人達に心から、心から感謝を――。ありがとう”という言葉を乗せた。

この日の「脈拍」は、いつも以上に艶やかな鼓動であった。最近のライブでは1曲目に置かれていることが多いこの曲をラストに持ってきていた意味。すべてがこの地から始まったことを意味していたように感じたのは、私だけではないはず。そして再び、この日彼らはこの地から未来へと羽ばたいたのである。

6月20日21日に日本武道館で行われる、『MUCC 20TH-21ST ANNIVERSARY 飛翔への脈拍 ~そして伝説へ~」と題された20周年集大成ライブでは、いったいどんな未来を魅せてくれることになるのだろう?
(取材・文/武市尚子)