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<海転落>男性、漂流70分 クーラーボックス命救う 大分

毎日新聞 5/12(金) 8:35配信

 大分県佐伯市で磯釣り中に海へ転落し、約70分漂流した男性(62)の奇跡の救出劇があった。救命胴衣を着用▽波が荒れ、漁を中断した帰港中の船が発見--という基本動作と偶然が重なったためだが、生死の最大の分かれ目は「浮力のあるクーラーボックスを抱えていた」ことだ。佐伯海上保安署は「自らの力で泳ごうとして体力を使うよりも、『浮くこと』を考えて体力を温存させて、救助を待つことが何よりも大切だ」と強調している。【柳瀬成一郎】

 救助事案は3月17日午前4時に発生した。佐伯市米水津浦代浦の磯場で釣りをしていた大分市の男性が高波にさらわれ、海中に転落。約70分にわたって漂流し、南に約780メートル流された。

 佐伯海上保安署によると、男性は救命胴衣を着用していたが、この日は波が時折5メートルにも達するような荒れ模様。救命胴衣だけでは、高波を受けて、体が安定せず、呼吸もできにくく、体力を奪われる場合もあった。

 それを救ったのがクーラーボックスだ。転落した際に男性は腹部に抱きかかえ、強い浮力を得た。波にもまれながらも、体を安定させた状態で救助を待つことを可能にさせた。これが小型漁船の航行という偶然を引き寄せた。

 その時、佐伯市米水津の漁船第六新生丸船長、成松満徳さん(68)と妻の喜代子さん(64)、長男の弘光さん(45)とその妻、智恵さん(47)の4人は、定置網の漁に向かっていた。しかし、波が荒いため、漁を諦めて帰港することを決断。港へ再び戻る途中、「オーイ」という声を聞いた。ライトを当てると男性を発見。すぐさまロープで男性を船に引き上げて船内にあった毛布で男性を温め、救助に成功した。

 男性は低体温状態で軽症だったが、荒波の中、70分にわたる漂流により、救助された際はさすがにパニック状態になっていた。同海上保安署の山下敏昭署長によると、訓練で日々鍛えている隊員ですら荒波の中、泳ぎ続けるのは十数分がやっとだという。海水温は18度で、サウナの水風呂のような冷たさ。男性は救命胴衣を着用したうえでクーラーボックスを抱いていたため、腹部の体温を奪われることを軽減させることができた。

 山下署長は「海中に落ちた際はパニックにならないように救命胴衣の着用は大原則だが、それに加え、なるべく浮力のあるものをつかむことが助かる可能性を広げる。ペットボトルでもいいので浮くものをつかめば安心もできる」と指摘する。

 同保安署は先月28日、男性を救った成松さんら家族4人に感謝状を贈呈。4人は「あの日、港に戻らずに漁をしていたら、男性はどうなっていたのか。命を救えてよかった」と話していた。

最終更新:5/12(金) 10:15

毎日新聞