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トランプべったりの右派メディア「ブライトバート」 フェイクニュースではない巧妙さ

ZUU online 5/12(金) 17:40配信

ドナルド・トランプ米大統領の当選に大きな役割を果たし、トランプ政権の政策に好意的な報道で政権維持に一役買っているとされる保守派寄りの新興オンラインメディア「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」。アレクサ・インターネットの発表では、3月末現在で全米47位にランクインするなど、非常に影響力が大きい。

米国民がリベラル対保守、エリート対非エリート、白人対非白人、持つ者対持たざる者などの対立軸で分裂傾向を強めるなか、「右派・白人・非エリート・持たざる者」などの先鋭化した立ち位置で親トランプ報道や論評を行っている。政治的な対極にある米リベラル派高級紙『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ブライトバートを評して「人種差別的・反移民・女性嫌悪が特徴」とこき下ろしているほどだ。

■台頭した背景とは

2007年にスタートしたばかりのブライトバートが台頭した背景には、二極化する米国の構造的な社会格差・経済格差を起こした「機能しない政治」の崩壊が横たわっている。さらに米メディアの全体的な質の低下、公器としての中立性の放棄や、「既存秩序の破壊者」たるインターネット台頭によるメディアの産業的凋落が、同サイトなどの極端な主張が好まれる下地を作っている。

ブライトバートは時代を映し出す、今の米社会の鏡なのだ。ブライトバートはそうした社会分断や不安増大の落とし子として生まれ、自分を生んだ社会分裂をさらに煽る主導者へと成長している。

■大統領選で示した存在感

ブライトバートは、トランプ大統領誕生の立役者であるスティーブ・バノン首席戦略官兼上級顧問が政権入りまで会長を務め、選挙期間中に親トランプ的論調を張ったことで有名だが、その影響力の大きさを示すデータがある。

マサチューセッツ工科大学のイーサン・ザッカーマン氏らが予備選期間を含む2015年4月から2016年11月の本選投票日までの19カ月間にブライトバートを含む2万5000のニュースメディアが配信し、フェイスブックやツイッターで共有された125万件の記事を抽出分析した研究によると、ブライトバート発の記事の共有数は、ツイッターで4万弱、フェイスブックで8000万超と、「既存メディアに匹敵する影響力を示した」ことが判明したのだ。ちなみにニューヨーク・タイムズの記事共有は同期間、ツイッターで4万件超、フェイスブックで1億件近くだった。

では、選挙期間中に共有されたブライトバート発の話題はどのようなものが多かったのか。ザッカーマン氏らの研究によれば、「対立候補である民主党のヒラリー・クリントン前国務長官の私用機密メール問題」が断トツで、「ヒラリーはクロ」との心証を有権者に植え付けた。これが、投票日直前のジェームズ・コミーFBI前長官によるクリントン候補捜査の発表と相まって、トランプ氏に有利に働いた。

さらに「移民問題」では、欧米における移民によるテロをことさらに強調したニュースを配信したり、移民と暴力的なイスラムの強い結びつきを示唆した論調を作り上げたり、中南米移民による性犯罪や福祉の悪用を暴露する内容の記事を多く流した。

特筆されるのは、選挙中にブライトバートを筆頭とする保守派メディアが移民問題を大統領選の中心的イシューに据えることに成功したことだ。リベラル派メディアやクリントン候補はそれを覆すことができず、反移民的な言説を振りまいたトランプ大統領が得票を増やすことになったのである。

■フェイクニュースではない巧妙さで主流を破る

一般的にブライトバートは偽情報を流す「フェイクニュース」の代表格のように思われているが、そうではない。逆に、同ニュースサイトの記事は事実に基づいている。

また、保守や右派の政治団体から資金をもらうのではなく、広告収入を資金源とする。そこが強みなのだ。

移民の犯罪や、一部黒人の過激な主張や、テロ犯のイスラム的思想との結びつきなど恐怖を煽るような内容のニュースでも、きちんと裏を取っている。誤報もあるが、事実誤認ならあのニューヨーク・タイムズ紙でもあり得る。

ブライトバートが際立つのは、報じるニュースの選択や切り口に露骨な政治的意図が含まれる点だ。

政治的志向が二極化した米国人は、リベラルならリベラル系メディア、保守派なら保守系メディアしかアクセスしない傾向がある。非常に閉ざされた環境だ。その狭い世界のなかで、「ヒラリーはこんな悪いことも、あんな悪いこともした」「移民がこんなにおぞましい犯罪をやらかした」「黒人はこんな過激な主張をする人もいる」という、一部の事実を拡大誇張したブライトバートのニュースを、自分が信頼する者のTwitterやFacebookのフィードで繰り返し与えられることで、読者の見解は「純化」され、トランプ氏のそれと重なり合い、同一化していったのである。

もちろん、政治的な世論操作ならリベラル派のニューヨーク・タイムズ紙も同性愛やジェンダー問題などで派手にやっている。だがブライトバートは、そうした既存メディアや既存の党派の枠組みを超え、トランプ氏のような非主流の主張で保革双方の主流を圧倒したことが、注目されたのである。

「右派・白人・非エリート・持たざる者」の立場で既存の秩序に挑戦し、主流を負かす戦略で成功したブライトバート。読者数は順調に増え、ますますその存在感を強めている。米国内の経済格差や社会格差が広がり続ける限り、ブライトバートや類似の「非主流」ニュースサイトの影響力も強まり続けるだろう。(岩田太郎、在米ジャーナリスト)

最終更新:5/12(金) 17:40

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