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波の揺れが電力に、日本初のシステムが実証稼働

5/12(金) 7:10配信

スマートジャパン

 島国である日本において、国土を囲む海のエネルギーを電力として活用できるようになれば、大きなメリットがある。現在、海の潮流や波力を利用する発電システムの開発が進行中だ。さまざまな種類の発電システムが検討されているが、日本では初となる「機械式」の波力発電装置の実証試験が伊豆諸島の神津島沖でスタートした。

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 2008年から波力発電システムの開発に取り組んでいる三井造船が中心となり、東京大学や五洋建設と共同開発を進めてきた発電装置で、今回の実証試験は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「海洋エネルギー発電システム実証研究」の一環となる。

 神津島の北側に位置する黒根沖で離岸距離800m、水深32mの外洋に設置し、2017年4月17日から発電を開始した。2017年の夏頃まで実証を行い運転制御方法や荒天時の耐久性などを検証していく。

上下運動を機械的に回転運動に変換

 開発した波力発電装置は、海面に浮かんだフロートが波で上下運動するエネルギーを、機械的に回転運動に変換。この力で発電機を回転させて発電する仕組みだ。ポイントアブソーバー式とも呼ばれる方式で、海底にアンカーを設置して係留索を使って固定している。装置の定格出力は3.0kW(キロワット)、全長約13m、フロート直径2.7m、空中重量は約10tだ。実証期間中の平均発電量は600W(ワット)を想定しているという。

 日本周辺の近海は欧米に比べると波エネルギーが小さい。そのため、波のエネルギーをいかに効率良く電力に変換するかがポイントになる。同時に周辺漁場との共存も考慮する必要がある。そこで三井造船は造波装置で培ってきた制御技術を用い、発電機をモーターとして使い、装置を励振(れいしん)させて効率良く電力を得られるシステムの開発に注力した。同時に漁場と共存できるよう、設置面積も小さくしたという。

 今回の実証試験では装置で発電した電力量を把握し、各種計器類や通信機器で電力を消費するのみで、神津島との系統連系は行わない。余剰電力は搭載している容量20kWh(キロワット時)のリチウムイオン電池に蓄電し、発電量が低下した時期のバックアップ電源として活用する。

発電コストが課題の波力発電

 豊富かつ24時間利用できる自然エネルギーとして期待される波力発電。普及のカギはコストだ。発電システムそのものの費用に加えて、生み出した電力を地上に送電するためのコストも掛かる。沿岸から遠くなるほど強いエネルギーを得やすくなるが、それに比例して送電コストも大きくなる。

 そこで最近では港の防波堤付近など、沿岸に近いエリアに設置するタイプの波力発電システムの実証が進んでいる。2016年11月には岩手県の久慈市にある「久慈港」で、日本で初めて電力会社の系統に接続する波力発電所が実証稼働した。

 東京大学・生産技術研究所が中心となって開発した波力発電所で、海底に設置する基礎部分の上に建屋を建設し、その中に建屋に発電機を収めている。その下にぶら下がるように設置している板(ラダー)が、波を受けて振り子のように運動し、発電機を回転させて発電する。発電能力は43kWで、平均して10kW程度の発電を見込んでいる。

 異なる方式の波力発電システムでは、NEDOが2015年に秋田県酒田市の酒田港で実証試験を行っている。これは港の護岸に直接取り付ける方式のシステムで、海面の上下の動きによって気流を生み出し、タービンを回転させて発電する仕組みだ。既設の護岸に後付けできるようにすることで、設置コストの低減を狙ったシステムだ。

 現状の波力発電のコストは1kWh(キロワット時)当たり60円程度。NEDOは今後のロードマップとしてまず発電コスト40円/kWhのシステムを確立し、2020年度以降に向けて20円/kWhを実現する要素技術の開発に注力していく方針だ。