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【衆院区割り~かながわ~変更区を行く】(下)座間市唯一の分割、相模が丘

産経新聞 5/12(金) 7:55配信

 ■自治体と住民のまちづくりに影響

 約1・6キロにわたって約3万本のサクラやツツジなどの植栽が並ぶ座間市相模が丘の並木道には、遅咲きのヤエザクラが、行き交う人々の目を楽しませていた。同市と地域住民が一体となり、老木化した木々を植え替えるといった並木道再生の取り組みにより、平成27年に「さくら百華の道」が完成。並木道を散策する人々は完成前の2倍に当たる年間100万人を数えるなど、街ににぎわいをもたらした。

 「市の新名所」となった同市相模が丘一帯だが、衆院選挙区画定審議会(区割り審)が今年4月、政府に勧告した区割り改定案では、市全体が属していた13区(大和市、海老名市、座間市、綾瀬市)から相模が丘が分割され、16区(相模原市緑区の一部、南区の一部、厚木市、伊勢原市、愛川町、清川村)に編入される。

 「まるで“島流し”。衆院選の時だけ分離するのは心外だ」。相模が丘でまちづくりを担ってきた坂本文彦さん(75)はこう憤る。「市とともに力を合わせてきた自負もある」とする坂本さんは「市と共有してきた価値観が崩れ去っていくかもしれない」と危機感を抱く。

 ◆「番地」単位で

 黒岩祐治知事は市町村長の意見を踏まえた意見を作成する際、生活エリアなどの結びつきや行政区域の分割を避けることなどを考慮して、昨年11月に区割り審に意見を提出。知事案では座間市の分割には全く触れられていなかった。

 市選挙管理委員会が「13区から相模が丘が抜け落ちている」と察知したのは区割り案が公表される2週間前の4月5日のこと。総務省から選挙区の区域確認を求められた際、気付いたという。

 総務省に問い合わせると「分割について市が何らかの意見を申し述べる場は設けない」という“そっけない返答”で、遠藤三紀夫市長は同17日、「われわれに何の相談もなく言語道断だ」と強調。遠藤市長は原則通り市域を分割しないよう求める要請書を総務省に直接提出するなど、怒りが収まらない様子だ。

 一方、相模原市南区では松が枝町など一部が14区(相模原市緑区の一部、南区の一部、中央区)から16区に編入されるが、「相南」地区が「番地」単位で14区と16区に分かれるという、細かい線引きがなされた。

 選挙区の境界線変更については「説明がないのでよく分からない」(相模原市議)とし、周辺は分譲マンションが建ち並ぶなど「住民同士のつながりが希薄な地域で話題にもなっていない」(同市議)のが実情だ。

 ◆知事案は見送り

 今回の区割り案では、12区(藤沢市、寒川町)の寒川町と13区の綾瀬市を入れ替えるべきとした知事案は採用されなかった。

 12区では26年12月の前回衆院選で自民現職の星野剛士氏と民主(現民進)現職の阿部知子氏=比例南関東ブロック=が激戦を繰り広げ、715票差で星野氏が小選挙区を制した。綾瀬市は13区選出の自民現職、甘利明前経済再生担当相の影響力が強く、「知事案が実現すれば、星野氏に有利」(自民関係者)との見方が強かった。

 知事案の見送りにより、「前回以上に、厳しい戦いになる可能性もある」(自民関係者)と焦りの声も漏れており、次期衆院選の行方に大きな影響を与えることは必至だ。

 32年実施の国勢調査の後、県内の衆院小選挙区が現在の18選挙区からさらに増える見通しで、選挙区の境界線は再び見直しが図られる可能性がある。

 「一票の格差」是正に向けた、人口優先の「見直し」は今後も続く見込みで、有権者の混乱をいかに防ぐか、試行錯誤が続きそうだ。

最終更新:5/12(金) 7:55

産経新聞