ここから本文です

浅田真央が引退したのに、なぜキム・ヨナはノーコメントなのか

ITmedia ビジネスオンライン 5/12(金) 12:50配信

 ちょうど1カ月が経った。フィギュアスケートの浅田真央さんが4月12日、現役引退を表明。日本中が労をねぎらう声や、これまでの偉業を称える声であふれ返った。

【キム・ヨナさんがコメントを発表する日はくるのか】

 一方で、このニュースは海外でも大きな衝撃として受け止められ、ネット上でも世界中で数多くのコメントが飛び交った。リンク上で競い合った他のフィギュアスケーターはもちろん他の競技で活躍するスポーツ選手たちもSNSなどを通じ、続々と浅田さんの引退についてメッセージを発信。「皇帝」の愛称で親しまれ、3月31日に引退を表明したばかりのフィギュアスケート男子トリノ五輪金メダリストのエフゲニー・プルシェンコ氏(ロシア)も温かい言葉を投げかけた。

 しかし、なぜかキム・ヨナ(金妍兒=韓国)さんはノーコメントの姿勢を貫いている。現役時代、彼女は浅田さんとライバル関係にあり、切磋琢磨しあいながらお互い成長を遂げていた。その浅田さんが現役引退を発表したことについて当然何らかの言葉は発するだろうと思いきや、まさかの無言――。こうした対応に、日本ではフィギュアファンのみならず、多くのネットユーザーから彼女に対して大バッシングがドッと沸き起こった。

 ちなみにフィギュアファンならば誰もが知っていることだが、1990年生まれで同い年の浅田さんとキム・ヨナさんはジュニア時代から氷上でしのぎを削り合う関係だった。このころは浅田さんの成績がまだ優勢。ところがシニアになると浅田さんはキム・ヨナさんに一気に巻き返されてしまう。

 2006年のグランプリファイナル(ロシア)でキム・ヨナさんに敗れると、その後は2013年の時点まで4勝11敗。大きく水をあけられてしまった。ターニングポイントとも言えた大会は、やはり2010年のバンクーバー五輪。浅田さんは「五輪で金メダルに輝くことが最大の目標」と公言してはばからなかったものの結局、同五輪でキム・ヨナさんが金メダルに輝き、自身は銀メダルに終わった。しかしこの年にイタリア・トリノで行われた世界選手権ではキム・ヨナさんを抑えて堂々の金メダルに輝いている。

●キム・ヨナさんの心境

 ジュニア、シニアでのこうした両者の経歴を振り返って見ても浅田さんとキム・ヨナさんはやはり立派なライバル関係にあったと言い切れる。ならば、なおさらキム・ヨナさんには「本当にお疲れさまでした」と浅田さんに対してひとことくらい、コメントを送ってもいいのではないだろうか。

 韓国メディアの中には「2人はジュニア時代まではよく談笑したりする仲だったが、バンクーバー五輪でメダルの色に差が生まれると明らかな距離間ができた。このあたりからヨナは浅田のことを、ほとんど意識しなくなるようになった」と見る向きもある。つまりキム・ヨナさんが浅田さんを「もうライバルとして考えなくなっていた」という見解だ。しかし仮にそうだったとしても浅田さんの引退に彼女がノーコメントを貫き通す理由としては説得力にかける。

 ネット上では「単にキム・ヨナの常識がないだけ」「もともと性格が悪く嫌な女なんだから、それは当たり前のことで驚かない」「むしろ真央ちゃんに今後もずっと触れないでいただきたい」など、キム・ヨナさんへの“口激”が今も繰り返されている。匿名で一方的に誹謗中傷まがいの悪口で相手を突き放してしまうのは簡単だ。とはいえ、それだけではキム・ヨナさんの真意が分からないままで終わってしまう。では一体、なぜ彼女は浅田さんの引退について語ろうとしないのか。韓国メディア関係者が彼女の心境を次のようにひも解いた。

 「もしキム・ヨナが浅田の引退について語ったら韓国国内からは彼女への批判が途端に強まるだろう。韓国スポーツ界の全選手が日本との勝負にすべてをかける覚悟で臨んでいる。我が国民はそういう期待を常に自国の選手たちへかけ続けているのだ。

 浅田真央が偉大な選手であることは認めるが、キム・ヨナはその浅田にバンクーバー五輪で勝ち、金メダルに輝いた。しかも4年後の2014年ソチ五輪でも彼女は銀メダルで、浅田は6位入賞止まり。その実力差は決定的なものになった。五輪はすべての競技において優劣を決める世界最高のスポーツ大会。その大事な五輪で韓国のスーパースターが日本のスターに勝ったという事実は揺るがない。『浅田に五輪で勝った偉大なる金メダリスト』のイメージを守り抜く意味でも、やはりキム・ヨナは浅田に関するコメントを口にしないほうが賢明に決まっている」

●本音を言えないのかもしれない

 大統領選挙の末、慰安婦問題日韓合意の見直しを示唆している文在寅(ムン・ジェイン)大統領が就任するなど韓国と日本との関係は決して良好とは言えない。そんな韓国国内で「国民の妹」と呼ばれるスーパースターのキム・ヨナさんが、日本の国民的ヒロイン・浅田さんにメッセージを送れば何らかの反発が出てくることは容易に想像がつく。韓国国内の強硬派を大きく刺激することにもなりかねない。しかも彼女は開催まで1年を切った2018年の平昌(ピョンチャン)五輪の広報大使も務めているので、国内で波紋を広げるような軽率な行動は極力差し控えたいところだろう。

 「本当はキム・ヨナ自身が浅田の引退について何らかのメッセージを発信しようとしていたとの情報もある。だが結局は政府関係者や側近たちのアドバイスもあって、回避したとも聞く。それにバンクーバー五輪以降、ほとんど会話をしなくなったのも韓国国民向けに仲が悪いように見せるためにキム・ヨナ側があえて浅田と距離を置くように心がけ、自身に反日の心が強いことを“演出”していたフシもあるようだ。彼女には、かなりしたたかなところもある」と日本スケート連盟(JSF)関係者は邪推する。

 思えば浅田さんが引退表明を行った際、そのニュースを大きく取り上げた韓国メディア各社は一貫して「日本の国民的ヒロインは韓国のスター、キム・ヨナを超えられなかった」などと辛口な報道ばかりだった。そういう偏重な報道が続く流れの中では、もしかしたらキム・ヨナさんも韓国国内で生きていく以上、内に秘めている本音を表に出すことが難しくなっているのかもしれない。

(臼北信行)

最終更新:5/12(金) 12:50

ITmedia ビジネスオンライン