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<治療的司法>再犯防止、導入提案…成城大に研究センター

毎日新聞 5/12(金) 15:01配信

 薬物犯罪など再犯率が高い罪に問われた被告について、刑務所ではなく裁判手続きの中での立ち直り(更生)を目指す「治療的司法」の研究センターが今春、成城大学(東京都世田谷区)で発足した。欧米では裁判官やケースワーカーが共同して治療プログラムを作る専門法廷の運用が進んでいるが、日本では認められていない。センター長の指宿信・同大教授は「治療的司法は再犯防止の切り札になる」と日本での導入を提案している。【島田信幸】

 治療的司法は、薬物依存や窃盗症(クレプトマニア)などの被告について、裁判所が刑を猶予して治療で原因を解明し、再犯の防止につなげることを目指す。自分の罪を認めて更生への意欲がある被告が対象で、裁判官が弁護士や医師らとチームを作り、治療プログラムを作成する。被告は社会生活の中でプログラムを実践するが、再犯に及ぶと実刑となり、収監される。

 代表例は1990年ごろに米国で始まり、カナダやオーストラリアなどに広がった「ドラッグコート」(薬物法廷)。裁判所が被告に実刑を言い渡す代わりに、一定期間の薬物離脱プログラムを提供。被告は定期的な薬物検査と出廷が義務付けられ、薬物法廷で周囲の支援や就労状況などのチェックを受ける。プログラムが終了すれば裁判も終結する。

 犯罪白書によると、日本では覚せい剤取締法違反で検挙された人の再犯率は6割を超え、2011年に刑務所を出所した人の49・4%が5年以内に再入所している。窃盗罪の再入所率も45%に上る。指宿教授は「刑罰だけでは再犯のサイクルは断ち切れない。日本にも治療的司法を導入するメリットはある」と指摘する。

 昨年6月に「刑の一部執行猶予」が導入され、裁判所は薬物犯罪などで実刑と執行猶予を組み合わせ、保護観察を重視した判決の言い渡しが可能となった。検察や弁護士会も福祉との連携を強化しており、不起訴や執行猶予となった人の再犯防止と社会復帰を重視する流れにある。

 成城大のセンターは窃盗症を専門にする弁護士らを研究員に迎えて裁判事例を研究し、講座などを通して治療的司法の認知度を広めたい考え。指宿教授は「日本は長年、裁判と矯正は別々に機能してきたが、変化が出始めた。裁判所、検察、弁護士がばらばらに活動するのではなく、医療や福祉団体と連携して新たな司法手続きを検討する時代に来ている」と話している。

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 同センターは6月10日午後1時半、成城大で設立記念講演会を開く。前厚生労働事務次官の村木厚子さんが「『罪を犯した人』のことを考える」の題名で基調講演する。入場無料。定員300人。問い合わせはセンターにメール(rctj@seijo.ac.jp)で。

最終更新:5/12(金) 15:01

毎日新聞