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シャマラン監督、批判の声に「落ち込んだりもした」復活のきっかけと脚本術の秘密を明かす

5/12(金) 13:00配信

Movie Walker

『シックス・センス』(99)をはじめ、衝撃の結末で世界を驚かせてきたM.ナイト・シャマラン監督。23人の人格を持つサイコパスを主人公とした最新作『スプリット』(5月12日公開)は、オリジナリティあふれる彼の鋭いセンスをたっぷりと堪能できるスリラーだ。新作を発表するたびに話題となり、批判を浴びることも多かったシャマラン監督。なんと、『アンブレイカブル』(00)の公開後には「鬱っぽくなってしまった」こともあったとか。どのように立ち直り、今に至るのか。独創性の詰まったストーリー作りの秘訣までを聞いた。

【写真を見る】ジェームズ・マカヴォイ演じる多重人格者が怖すぎる!

本作は、3人の女子高生を誘拐・監禁した謎の男を主人公に、女子高生たちの恐怖と次第に明らかとなる男の心の闇をスリルたっぷりに描く物語。『アンブレイカブル』と世界観を同じくする物語で、シャマラン監督は「次回作には『アンブレイカブル』と『スプリット』から繋がる新作『GLASS』を世に放つ」ことを明言している。

ブルース・ウィリスとサミュエル・L・ジャクソンが共演した『アンブレイカブル』から17年。シャマラン監督に『アンブレイカブル』公開当時を振り返ってもらうと、「鬱っぽくなってしまった」と驚きの告白をした。「放心状態だったよ。せっかく作品を作っても、売り方を間違えたのかたくさん批判もあった。批評家からも厳しい言葉があったね。ものすごく落ち込んだよ」。

そう、シャマラン監督は熱烈なファンを生み出す一方、新作を世に送り出すたびに叩かれてきた監督でもある。落ち込みつつも、シャマラン監督はギリシャ時代の哲学者の「自分のコントロールできるものに集中すべきだ」という言葉に励まされたと語る。「世の中の批判や批評家の意見は、自分のコントロール外のこと。僕は、それにとらわれてしまうと何も成長できないと思ったんだ。『観る人にこう感じてほしい』と操作しようとすると、世の中からビンタされるとも思う。大事なのは、自分が好きだと思うもの、自分の今撮れる最高のものを作ること。そうすればきっと、みんないずれその世界観についてきてくれるはずだ」。

エネルギーに満ち、瞳を輝かせて語るシャマラン監督。『アンブレイカブル』後の自分に、「自分の思う最高の映画を作ったと思うか?と聞きたい」とにっこり。「絶対にイエスと答えるから、だったらそのまま進み続けないさいと言いたいね。今の僕は“自分のコントロールできること”に集中することを学んで、成長して、自信もつけた。だからこそタブーにもユーモアを持って斬り込んでいけているんだと思う。一番大事なのはオリジナリティ。自分自身を信じ続けることで、パワーが生まれてくるんだ」。

オリジナリティにこだわり、思い切ったアイディアを作品に反映させるシャマラン監督。本作では、なんといっても23の人格を持った主人公が強烈なインパクトを与える。「DID(解離性同一性障害)において、もしそれぞれの人格が100パーセント自分自身だと信じていたらどうなるだろう?と考えたんだ。そしてもしある人格が自分に超自然的パワーがあったらどんな風に見えるだろうってね」と着想のきっかけを語り、演じたジェームズ・マカヴォイの演技についても「カットと言った瞬間に、僕を含めて全員が拍手をしてしまうような演技だった。ちょっと異常なくらいのパフォーマンスだった」と手放しで称える。

驚愕のラストが観客を待ち受けるが、脚本作りの秘訣を聞いてみると「ラストから考えるわけではない」と明かす。「アイディアを養って、徐々に優しく紡いでいくようなスタイル。言うなれば、終わりのない“こだま”を追い求める感じかな」とあらゆる可能性を追いかけていくのだとか。

「例えば、今思いついたことを言ってみよう。ある女性がアパートで紅茶を作っている。その部屋の隣では夫が『早くしろ!』と怒鳴っている。その夫の姿は見えないんだけれどね。彼女は紅茶を作りながらカタカタと手が震えていく。次にドアが開くと、結婚指輪を外した彼女がその夫と家を出て行く…なんていうふうにね。このストーリーの合間や、その先にもいろいろな可能性が見えてくるだろう?僕はパッと描写がひらめいたら、すぐにメモをとるようにしているんだ。アイディアの記録係のようにね。このメモこそが、次の作品への手がかりになるんだ。今もメモをとったから、映画になるかもね(笑)」。

いつも見たことのない世界へ誘ってくれるシャマラン監督。『スプリット』は悲しい男の物語としても胸を打つ。自分自身を信じること、そしてメモ魔の素顔が、パワフルで心揺さぶる映画作りの秘密だった。【取材・文/成田おり枝】

最終更新:5/12(金) 13:00
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