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RAWデータはこういうときに力を発揮する

5/12(金) 16:12配信

ITmedia LifeStyle

 「ローデータって何がいいの?」と聞かれたのである。

 ロー、あるいはロウは「RAW」。RAWデータ。RAWは「生の」という意味。raw meatなら生肉。

元が同じ写真だと思えないほど、JPEGで撮った方は色が破綻して紫になっている

 最近、iPhoneがRAWデータの撮影に対応したってちょっと話題になった。

 RAWデータってなんだろう。

●RAWデータは生データ

 デジカメで写真を撮る。

 まずレンズを通った光がイメージセンサーに当たり、電気信号になる。この時点ではまだアナログデータだ。このデータがカメラ内でデジタルデータに変換される。このままでは写真として使い物にならないので、デジタル画像処理を施し、JPEGデータに変換して記録メディアに保存する。

 大ざっぱにいえばこれが撮影時の一連の流れだ。

 で、デジタル画像処理を施す前のデジタルデータが「生データ」つまり「RAWデータ」だ。

 RAWデータはそのままでは使えないので、それを処理して画像データにする作業を「RAW現像」あるいは単に「現像」という。

 ちなみに、ときどき写真をプリントすることを「現像する」と呼ぶ人がまだいてむずむずするけれども、それは単なる「印刷」であって、「現像」とは何の関係もありません。フィルムカメラの時代に、撮ったばかりのフィルムをお店で「現像」+「プリント」をセットでしてもらってたので、プリントすることを現像すると間違えて覚えてしまった人がいたのだろうなあ。

 で、ほとんどのデジカメは画像保存形式として、JPEGの他にRAWを選べる。なぜわざわざRAWデータがほしいのだろう。

 1つは「自分で画作りをしたい」から。

 JPEGというのはカメラ内で生データを現像した結果だ。でもカメラ任せの現像ではイメージ通りに仕上がらないこともある。

 RAWデータで保存しておいて、自分で現像処理を行えば自分のイメージ通りの写真に仕上げることができる。

 もう1つはディテールが重要な写真を必要とするから。あとからレタッチして仕上げるとき、RAWデータの方がディテールを生かせる。大きくプリントしたいときはRAWで撮影し、自分で仕上げたい。

 JPEG画像でもあとから修正・加工できるのでRAWデータで撮らなきゃダメってことはないんだけど、RAWデータには撮影時に得られた情報全てが詰まっているので、あとからいじるための余地がすごく大きいのだ。

 分かりやすい違いを2つ見てみよう。

●RAWデータならホワイトバランスも自由自在

 一番分かりやすいのがホワイトバランス。

 実は写真のホワイトバランスって「現像時」に調整しているので、生データには「ホワイトバランスを決める前」のデータが入っているのである。

 ここに1枚の夕日の写真がある。まあ普通の夕日である。フルサイズのデジタル一眼レフで撮影した夕日の写真だ。

 これのRAWデータをAdobeの「Photoshop Lightroom」というソフトで開いたのがこちら。RAWデータをLightroomで開くと、Lightroomが自動的に標準的な手法で現像して表示してくれる。まあ目に見えているのは常に現像後の状態であると思っていい。

 それがこれ。

 右に画像を処理する項目がいっぱいあるんだがここで「WB」(ホワイトバランス)に注目。

 試しにこれをめいっぱい左にスライドしてみよう。

 青くなりましたな。ホワイトバランスを変えて青っぽくしたのだ。かなり幻想的な夕日になった。これを夕日と呼んでいいかどうかはアレだけど、写真は真実を写すもの、と言いたい人にもアレだけど、夕日である。

 では同じ画像のJPEGデータでこれをやってみよう。RAW +JPEGの同時保存モードで撮影してるので、同じ写真のJPEG版もあるのだ。

 それがこちらだ。明らかに部分的に変でしょう。

 分かりやすいように並べて見る。

 元が同じ写真だったとは思えないくらい、JPEGで撮った方は色が破綻して紫になっちゃってる。

 これがJPEGとRAWの違い。

 JPEGで保存した写真はRAWが持っていた豊富な情報のうち現像後に不要になった部分を捨ててるからこういうことが起きる。

 あとから「あ、さっき捨てた情報が必要になった」といっても遅いのだ。RAWはホワイトバランスを決定する前の情報を持ってるからホワイトバランスを自在に設定できる。

●やべっ露出オーバーだってときも多少は頑張れる

 2番目の例は露出。

 露出って要するにイメージセンサーに当てる光の量で、結果として写真全体の明るさとなって現れる。

 これ、RAWデータ云々以前にシャッターを押した瞬間に決まってる。だからRAWデータだから露出があとから自由自在ってことは……ない。

 でもRAWデータはけっこう幅広い輝度の情報を持ってるので、多少は救えるのだ。具体的な例を1つ。

 これもフルサイズの一眼レフで撮影した写真。今度の被写体は黒猫。

 黒猫が逆光で暗く写っちゃって黒猫が暗いと単なる真っ黒で何が何だか黒かったので黒猫が浮き出るように明るく撮ったという写真。

 黒猫が際立ったのはいいけど、背景が白くトんじゃってる。

 ちょっと不自然にトんじゃったので少し抑えたい。

 そういうときは「白レベル」と「ハイライト」をぐっと下げてやる。明るい箇所のレベルを落とすと思えばいい。

 そうしたら背景の白トビが抑えられ、白くトんで分からなくなってた建物のタイルの様子も浮かび上がってきた。

 ではこれをJPEGデータでやってみる。

 そうすると、確かに背景の真っ白は少しおとなしくなったが、後ろの建物のタイルの模様はトんだまま、よく見ると真っ白にトんでたとこが単に明るいグレーになっただけだ。

 つまり真っ白になってしまった箇所のデータもRAWデータにはちょっと残ってて、それを引っ張り出せるのだ。

 見比べてみるとよく分かる。

●イメージ通りに写真を仕上げてみよう

 以上、RAWデータとJPEG画像の差が出やすい分かりやすいポイントを2つあげてみた。

 要するに、RAWでもJPEGでもあとから同じように画像をレタッチしたり加工したりできるけど、RAWデータの方がより多くの色情報や階調を持っている分、より広い幅でいじることができて仕上がりのクオリティーも上がるのだ。

 もちろんRAWデータも万能じゃない。

 ホワイトバランスはすべての可能性を持っているし、露出もJPEGに比べると少しは広い範囲の情報を持ってるので調整可能だが、フォーカスに関してはどうしようもない(ごまかすことくらいはできるけど)。

 でもこんななんてことない電線にとまったツバメの写真も、

 こんな風にしぶく仕上げることも

 こんな風に柔らかくほわっと仕上げることもできる。

 前回撮ったようなポートレートも、こんな風に少しホワイトバランスをずらして青っぽくし、露出を上げて明るくし、ハイライト部をトビすぎないよう、シャドウ部をちょっと浮かせる感じで調整し、明瞭度を下げてほわっとさせれば、イマドキのクールで華やかな写真になる。

 もう1つ、春の亀戸天満宮。逆光気味なので空が白くトんでいるが、RAWデータにはもうちょっと情報が残ってるので、明るいところをぐっと抑え、暗いところをぐっと持ち上げ、彩度と明瞭度を上げてコッテコテのコッテコテなHDR風写真にしてみた。

 スカイツリー回りの青空や雲が復活してるのが分かる。こういうコテコテな高彩度な写真に仕上げたいときはRAWデータの出番だ。

 補正前と後を上下に並べてみたので分かりやすいかと思う。

 いやあ、かなりコテコテになりましたな。

 何でもかんでもRAWで撮っておけとは思わないけど(ファイルサイズはデカいし、1枚1枚仕上げるのも面倒だし、多少の編集ならJPEGでも問題ないし)、RAWで撮ってレタッチって作業は一度経験しておくといい。

 それから、優秀なRAW現像系のソフトを1つもっておくこと。JPEG画像のレタッチにも使えるから。

最終更新:5/12(金) 16:12
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