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J-WAVE社長が語るスマホ時代のラジオのあり方 「社会の窓として可能性がある」

オリコン 5/14(日) 8:10配信

 28年前の開局以来、“東京のローカリティ”を活かした番組作りを続けてきたJ-WAVE。近年では音楽ライブのほか、筑波大学とともにテクノロジーと音楽を掛け合わせたフェスを開催するなど、イベント事業でも話題を多数提供。その存在感はますます高まっている。昨年6月の代表取締役社長就任から約1年が経過した中岡壮生氏に、スマホ時代のラジオのあり方、同局の今と未来像を聞いた。

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◆生活を豊かにしたい都市生活者が幅広い音楽と出会える場に

――社長就任から約1年が経ちますが、これまでどのように会社を率いていこうと考えられてきましたか。
中岡 日本のメディア業界も、ネット広告こそ好調でしたが、ラジオを含め4大メディアが厳しい状況で、それは今も続いています。そんななか、J-WAVEは今後どのように進むべきか大いに悩みました。ですが、「迷った時は原理原則」と思い至り、創業時の精神に立ち返ることに決めたのです。創業時のJ-WAVEはマスを目指さずターゲットを絞り込み、全国ネットではない東京のローカリティを活かして「世界の中での東京」を打ち出し、バイカルチャーな価値観を提示して成功し、一種の社会現象ともいわれました。開局は28年前ですから、無論さまざまなことが変化しています。でも、時代が変わってもJ-WAVEは「ラジオの枠を超えて時代を切り拓く社会的な存在であり続けることでしか成長できないブランド」なのだと思います。「都市生活者のライフスタイルを豊かにする」ということがJ-WAVEの命題なのです。ですから、改めてターゲットを「生活をより楽しくより豊かにすることに努力やお金を惜しまない都市生活者」としっかり見据えて、そこに特化してコミュニケートしていこうと考えました。

――具体的にはどのような策を練られましたか。
中岡 スマホがファーストスクリーンになっている現在、「PCからスマホへ」というチャネルの変化のみでなく、その変化が人々の本質的な動態を大きく変えていると思います。情報の消化量やスピードがとても早くなって、ユーザーたちは短気になっている。となると、こちら側は小手先の施策ではなく、J-WAVEを聴いてもらった時に「本質的に良質なメディア体験」を提供できなければならない。それができないと見向きもされなくなる可能性があります。番組を核に動画や画像、音声、VR、リアルなど、あらゆるフォーマットで、スマホを中心にデリバリーできることが非常に重要なので、番組作りとともにそういったデジタル施策をさらにブラッシュアップしていく必要があると考えています。この4月には、まず平日昼帯の改編に着手しました。「東京のイマ」に焦点を当て、サッシャとクリス智子というエースを配置。改編からまだひと月ですが、すでにradikoのデータではリスナーに高い支持をいただいています。

――radikoの登場は追い風となっているのではないでしょうか。
中岡 掌にデバイスがあるというのはすごいことですから、radikoができて本当に良かったと思っています。さらに、シェアラジオによって、SNSの中にもラジオが入り込めました。オールドメディアといわれてきたラジオがフロントランナーとしてデジタルのメディアたちと並べるようになったといえるのではないでしょうか。スマホの時代はある種コクーン化の時代だとも考えています。世にはたくさんの情報が溢れていて、スマホによってすべてにアクセスできているかの気分になります。でも、実際には「自分がすでに好きなコトと、好きそうだとアルゴリズムに判断されたコト」に囲まれてしまっている……。そんな時代だからこそ「社会の窓としてのラジオ」に可能性があるとも思っています。私はSNSやサブスクリプションサービスって大好きなんです。好きなモノや情報にすぐアクセスできて、凄くいい時代だと感動さえしています。それらと比べるとラジオって完璧じゃない。いくらターゲットを絞っても、ラジオはマス。「完璧なマイワールド」は提供できないんです。でも、それこそが「社会の窓としてのラジオの魅力」なのだとも思っています。今まで好きでもなかったジャンルの曲でも情報でもJ-WAVEの世界観の中で聴くと「これは自分のためのものだ」と思わせられる瞬間がある。それがラジオの優位性だと思います。

――シェアラジオに向けて、何か施策は実施されましたか。
中岡 ナビゲーターが放ったひと言で未知の音楽がグサッと刺さることってありますよね。それはラジオの大きな魅力の1つだと思っていますので、音楽とそれを語れる人の掛け算の番組を作ろうと“ディープキャストゾーン”と銘打って、金曜日の深夜に30分単位の番組を並べました。例えば、小袋成彬氏の番組に宇多田ヒカルがゲストで出てくれた際には、彼女が椎名林檎から受け取った、「丸の内サディスティック」の音源に乗せて2人で、番組内で熱唱したんです。これはすごくシェアされて、当社にとっても、タイムシフトで聴いてくれた人が、リアルタイムを超えた初のケースとなりました。また、中東、南アジア音楽に精通しているサラーム海上氏がオリエンタルミュージックとリアルな現地情報で綴る番組も、当社の特徴が非常に表れた面白い企画だと思っています。

◆J-WAVEは「東京のイマ」を生活者とともに体験して発信していくメディア

――J-WAVEは創業当時からイベントに力を入れていることも特徴です。
中岡 バーチャルでの体験が手軽にできる今、リスナーや広告主の声を聞くと、逆に「リアル回帰」を感じています。イベント市場はどんどん大きくなり、生活者はリアルな体験を求め、広告主もデジタルへの投資は継続しつつも一息感があり、リアルイベントの方へ興味を持っているのではないでしょうか。J-WAVEが培ってきた音楽イベント、カルチャーイベントに今こそ期待がかかっていると実感しています。特にリアルイベントとデジタルの掛け算は可能性があると思っています。スマホがファーストスクリーン化しているわけですからユーザーに事前にイベント情報を流すことはもとより、現場でもデジタルスタンプの配布やAR体験、SNSへの投稿内容の投影等、スマホと連動させた仕掛けがいろいろできるはずです。

――昨年より、筑波大学と一緒にイベント「イノベーションワールドフェスタ」も開催されています。
中岡 米テキサス州オースティンで開催されている音楽・映画・インタラクティブの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)」にかねてから興味があり、テクノロジーと音楽という切り口でイベントができないかと考えていたので、筑波大学から「G7茨城・つくば科学技術大臣会合」の公式プレイベントを一緒にやらないかという申し出を受けたときはとても嬉しかったですね。テクノロジーの進化が生活をどう豊かに変えていくのか?“音楽”や“カルチャー”はVRやARで今後どのように表現されていくのかなどを体験できる面白いイベントになりました。東京からの距離が遠いというリスクはあったのですが、おかげさまでチケットは完売し、ネット上でも大いに盛り上がりました。今年も6月3日に開催予定ですが、新たに文科省やJAXA、JAMSTECの協力を得ることができました。また、きゃりーぱみゅぱみゅも3DCGとARを組み合わせたスペシャルライブにチャレンジしてくれます。

――その他、放送外の事業で新たに取り組まれていることはありますか。
中岡 これまでは番組を作っても、流れて終わりでしたので、これをストックできないかと考え、番組でオンエアされた話題や情報を「J-WAVEニュース」という形で、スマートニュースやantenna、LINEに配信を始めました。最近ではユニークユーザー数が月間110万人を超えており、私どもにとって大切な資産になっています。Yahoo!も配信してくださることになりました。今後はPV増を狙っていきます。

――最後に、J-WAVEの今後の抱負をお聞かせください。
中岡 J-WAVEは良くも悪くも東京ローカルです。そのローカリティを存分に活かしていきたい。深夜に「AVALON」という渋谷を舞台にした番組がありますが、渋谷は区長を中心にもう一度文化発信の街にしようと取り組まれています。また当社の本拠地である六本木、再開発が進んでいる虎ノ門、そして銀座、丸の内、日本橋など東京には個性を活かしつつ大きく変化している街がたくさんあります。J-WAVEはそんな「東京のイマ」を生活者とともに体験して発信していくメディアであろうと思っております。

(文:河上いつ子/写真:西岡義弘)


中岡壮生(なかおか もりお)
1956年生まれ。1989年にJ-WAVE入社後、営業局長などを経て、2008年に取締役営業局長に就任。2010年に常務取締役、2016年に同社代表取締役に就任(現職)。

最終更新:5/14(日) 8:10

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