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ホウ・シャオシェンが主演作『台北ストーリー』、そして次の監督作を語る

ぴあ映画生活 5/12(金) 7:00配信

2007年にこの世を去った台湾の巨匠エドワード・ヤン監督の『クーリンチェ少年殺人事件』と『台北ストーリー』がいずれも最新の映像技術で修復されたバージョンで公開され、新しい世代の映画ファンからも好評を集めている。中でも『台北ストーリー』は、同じく台湾映画界を代表する巨匠ホウ・シャオシェンが主演と脚本を務めた作品で、いま改めて本作を振り返り「この映画にはいつの時代にも変わらない価値観が描かれている」と語る。

『台北ストーリー』画像

米国留学から帰ってきたばかりのエドワード・ヤンと、商業映画の世界で活躍していたホウ・シャオシェンは、編集室で出会った。「私は、長編『風櫃の少年』を、エドワード・ヤンは初長編『海辺の一日』の制作に入っていた時で、ちょうど隣の編集室で編集をしていた。そこでヤンに映画を見せたら『音楽がダメだね、僕が音楽を付けてあげるよ』と言われて、彼のアドバイスで、ヴィヴァルディの『四季』を使うことになりました。そこから、私たちは本当に意気投合しました。エドワード・ヤンの家に行って、色々な映画のことを語り合いました」

やがて、エドワード・ヤンはホウ・シャオシェンに『台北ストーリー』の企画を持ちかけ、主演を要請。ヒロインの女優を選んだのも、映画の資金を工面したのもホウ・シャオシェンだったという。「私はずっと台湾にいて、台湾の業界、社会にも詳しかったので私がその役目を担いました。エドワード・ヤンはアメリカから帰ってきたばかりだったので、私が全部責任を持って行いました」。ちなみにクレジットでは、ヤン監督、ホウ・シャオシェン、チュウ・ティエンウェンが共同で脚本を執筆したことになっているが、実際は「3人で脚本について話し合っただけで、場を主導していたのはエドワード・ヤンですし、最終的に文字にして脚本を執筆したのは彼でした。ヤンは義理堅くて、律儀な人だったので私とチュウ・ティエンウェンの名前を入れてくれたのです」

映画は、社会が大きく動こうとしている台北の町で暮らす若い男女の不安や夢を丁寧に描き出した作品で、ホウ・シャオシェンは「この映画にはいつの時代にも変わらない価値観が描かれています。若い人たちのもつ情熱や夢、目標に向かって彷徨う様は、いつの時代になっても変わらないものでしょう」と分析する。映画は初公開時、台湾ではまったくヒットせず、4日間で公開が打ち切られたが、長い年月を経てデジタル修復され、世界中の映画祭や劇場で再び公開されている。「ヤンの映画は、当時の観客には早過ぎました。時代の先を行っていました」

ちなみに、ホウ・シャオシェン自身は「映画を撮り終わってしまったら、それがどのよう観られるとか、DVDになるとか一切、関心はありません」と笑顔をみせる。「映画監督として関心があるのはいつも次の映画のことです。だから、過去の映画が修復される過程で、仮にデジタルなど形が変わってしまったとしても、私個人は問題ないと思います。大事なことは、その映画をその時代に観たいと思う観客が存在すること。それだけで十分です」

本インタビューは“主演俳優”として来日した際に行われたものだが、もちろん自身の監督作も準備中だ。「次回作は、ネットを通じて観る作品になると思います。実は、アメリカのある会社から1話が50分ぐらいで、8話から10話ほどの新作をつくってほしいというオファーが来ています。現代はネットを通じて新作を観る方向へと動いている。しかし、形式が何であったとして、これまで通り、自分の撮りたいものを撮る、自分の視点で時代を見つめた作品を撮る。そこは変わらないでしょう」

『台北ストーリー』4Kデジタル修復版
全国順次公開中

最終更新:5/12(金) 7:00

ぴあ映画生活