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【房総かふぇ放浪記】cafe・岬 魔法が幸福へ誘うサユリストの聖地

5/12(金) 15:22配信

ちばとぴ!チャンネル

カフェは文化の花開く場所。例えば、花の都パリのモンマルトルにはかの有名な「Le Dome」というカフェがある。パリが芸術の都として栄えたのは上質なカフェがあったからこそと思う。ぼくの中では、上質なカフェは「まちのえき」なのだ。ひらがなにするのは、町・街・待ちと駅・益・役などの意味を含んでいるからなのだが。
 まちのえきでは、毎日楽しいドラマや新しい出会いが生まれてくる。珈琲は主役ではなくBGM。珈琲の醸すアロマや味わいが、人の思考を鎮静させ、脳の働きを明晰にさせる静かな脇役として存在するのだ。そして語らいが盛り上がるのは、珈琲がゆったりとした心の開放感をもたらすからなのだ。今日も粋な店主に出会うために、心のままに放浪に出ようと思う。

残夏の浜金谷は、眩しいほどの青空でも去りゆく夏を惜しむように哀愁が漂っている。合掌館の薄暗がりの静寂の中、ひとり焙煎に集中していると、その珈琲フレグランスに誘われるように遠い日の記憶がぽつりぽつり花開く。上質の豆が忘れかけた記憶を覚醒させてくれるのだ。そう、その日は、初恋の女性について思い出させてくれた。

ぼくらの世代では、圧倒的な人気だった女優の吉永小百合さんに、物心が芽生えたころから惹かれていたのだ。気付くと焙煎をしながら、「いつでも夢を」を口ずさんでいたりするのだ。「テレビに映ると釘づけだったのよ」と姉からも聞いた覚えがある。そういえば鋸山の麓にある「岬のカフェ」は、小百合さんが主演した「ふしぎな岬の物語」の舞台になったカフェだったはず。

思い立ったら即突撃のぼくは、カフェ前の国道127号線を保田に向かい、てくてく歩いていたのだった。歩いて行ける「かふぇ放浪記」も、たまには楽しいもの。小説の舞台になり、映画化され、今でこそ有名だが、ぼくが若かりし日に家族で訪れたこの岬に、この店はすでにあったのだから、もう何十年ここにあるのだろうか。南房総のカフェ文化の先駆け的な存在なのだ。潮の香を感じながら思い出がどんどん膨らんでゆく。

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