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池松壮亮、松田龍平と堂々渡り合う“二世女優”石橋静河が実力で主演を掴むまで

dmenu映画 5/12(金) 15:40配信

コンテンポラリーダンスから役者への道のり

二世俳優と一言でくくるのは簡単だが、この石橋、親の威光とは無縁のところで積んできたキャリアが興味深い。4歳からクラシックバレエを始め、中学3年から米・ボストン、カナダ・カルガリーに4年間留学。帰国後はコンテンポラリーダンスに打ち込んでいたが、ごく一部しか舞台に立てない厳しさや、表現方法という壁にぶち当たった14年秋、出会った現在所属する事務所のスタッフから「芝居をやりたいんじゃない?」と薦められ、女優への道に傾倒したという。

一昨年9月に舞台「銀河鉄道の夜」で主演デビューしたものの、「稽古と本番ではすべてが違う。できないことが悔しくて、初日が終わってワアっと泣いてしまった」というほどの負けず嫌い。その後も映画『少女』、『PARKS パークス』などで役を射止め、現場での経験を積んだ。

そして、石井裕也監督が最果タヒさんのベストセラー詩集を脚色しメガホンを執った『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』に抜てきされる。参加したワークショップで芝居と真摯に向き合っている姿が、新人を探していた製作スタッフの目に留まったのがきっかけだった。これは、地道な努力を積み重ねた結果といえる。

「好きなことを一生懸命やりなさい」と言われて

現代の東京で看護師をする傍ら、ガールズバーでも働きどこか諦観をたたえた美香という役どころ。クランクイン前に話を聞く機会を得た際は、初の大役に「正直、すごく怖いですけれど、同じくらい楽しみな気持ちが強いです」と笑顔を見せていたが、公開を前に撮影現場は「闘いだった」と振り返る。美香のことで頭がいっぱいだったようで、空き時間にも気軽に声をかけることがはばかられるほど張り詰めた空気を漂わせていた姿が、強く印象に残っている。

ただ、その成果は、しっかりとスクリーンに刻まれたと言える。左目の視力を失った日雇い労働者を演じた池松とともに、生きづらさにもがきながらもささやかな愛を模索していくほのかなラブストーリーの根幹を成した。まさに濃密な世界観の中で池松や松田龍平、田中哲司らと渡り合い、作品を一本背負って立つ堂々の存在感。日本映画の新人女優としては、1998年『がんばっていきまっしょい』でその年の新人賞を総なめにした田中麗奈の鮮烈なデビューを思い起こさせる。

くっきりとした顔立ちは父親のイメージと重なり、かもし出される芯の強さは母親譲りか。その両親からは「子どもの頃から好きなことを一生懸命やりなさい、と言われていました」という。その上で、「表現者としてすごく尊敬しています。私も自分の意思、足でしっかりと歩いていきたい」と固い決意をみなぎらせる。一方で、数多くある好きな映画としてグザヴィエ・ドラン監督・脚本・主演の『胸騒ぎの恋人』などを挙げながらも、同じ石井監督で池松と原田も出演した『ぼくたちの家族』も入れる愛らしさものぞかせる。

逸材と呼ぶにふさわしい大型新人の誕生を喜びつつ、今後の飛躍も注視していきたい。

文=鈴木元/Avanti Press

最終更新:5/12(金) 15:40

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