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「エルシャダイ」の“創造神”竹安氏が断言「2週間以内に新たな神話構想を発表!」

Impress Watch 5/13(土) 7:00配信

 5月12日に東京・渋谷で開催されたインディーゲームのカンファレンス「TOKYO SANDBOX 2017」。「エルシャダイの世界」と題された講演には、「エルシャダイ」のディレクター兼キャラクターデザイナーの竹安佐和記が登場し、同作の構想などについて語った。

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 竹安氏はカプコンのクローバースタジオで「デビルメイクライ」、「鉄騎」、「大神」といったタイトルに関わってきた。最新のゲームは、角川ゲームスから6月に発売される「GOD WARS ~時をこえて~」が挙げられる。今回登壇が決まった時のニュースで「エルシャダイの続編に関する衝撃発表も飛び出すかもしれません」とニュースになったという。しかし「『エルシャダイ』の続編、それは紙の時間では一瞬だが、人の時間ではあと365年はかかるかもしれない」とやんわりと否定。

 「ここからが本編」と竹安氏は前置きしながら、「『エルシャダイ』について、このイベントにふさわしいエピソードがある」と語り、「エルシャダイ」にまつわる話を紹介した。

 カプコンを辞めたあと何のあてもなく東京に出てきた竹安氏だが、最初は親戚の家に泊まろうと思ったら、「来るな」と断られたという。竹安氏にはゼロ円で東京に出てきたいという夢があったそうだが、ただそれは家があると思ったから。「出てきたが家がなかったので、親にすぐ電話をして50万円を借りた。それでとりあえず家を借り、2~3か月は生きていけると思った」(竹安氏)。

 そして「大神」が東京でも非常に話題になっていたため、たくさんの人が会いたいと言ってくれたそうだ。それでいろいろな会社を紹介され、仕事はすぐ見つかったのだが、本作については「Vijay Chadha氏と竹下和広氏の2人の神に感謝したい。この2人といろいろな人に出会うことによって、スタートラインに立てた」と語る。Vijay Chada氏からは、「デビルメイクライ」と「大神」を越えるようなアクションゲームを作ってほしいと言われたそうだ。

 そして「エルシャダイ」の開発に取りかかった竹安氏だが、2010年の東京ゲームショウでは日本ゲーム大賞のフューチャー部門賞を受賞。ユーザーからの期待も高まったゲームであったものの、この時にはすでにスタジオの閉鎖が決まっていた状態だった。

 そういった状況とは関係なく、「エルシャダイ」は社会で評判を生み、エドウィンとのコラボジーンズを発表したり、CMが世界最長としてギネス記録になったり、「そんな装備で大丈夫か?」というセリフがネット流行語大賞ともなった。しかしリーマンショックの影響により、開発が未完で終わってしまうことになる。「親会社がこういうことに巻き込まれるほど規模が大きかったので。僕も初めてテレビでリーマンショックを見た時には、自分に降りかかるとはまったく思っていなかった」(竹安氏)。

 しかしこの時竹安氏には、自分の中で思っていた哲学があった。それは何かというと、ゲームは世の中に出さないとなかったことになるということ。「たとえクソゲーと言われても、世に出たゲームが評価されるのであって、どんなにいいゲームを作っても発売されなかったら誰も知らない。なので発売することにこだわった」(竹安氏)。そうした問題を抱えながらも「エルシャダイ」は発売されたわけだが、竹安氏がなんとかしたいと思ったことは「お話が未完で終わっていること」。ユーザーが不満だったのは、ラスボスが存在しなかったことにもあるが、「しかし僕の中で思っていたストーリーはそういうことではなく、ゲームの中で語られたストーリーは9時間だけで、残りの730年の物語があった」(竹安氏)。

 本作は親会社から10年続くコンテンツを作ってほしいと依頼されたこともあり、まずはサーガを用意した。「一言で言うと、『エルシャダイ』は惑星創世の物語。神の右手と言われるルシフェルと、神に選ばれたイーノックが天動説の世界から、地動説という、自分たちが回っている世界と、天地創造に立ち返る話が大きなテーマだった。おそらく日本で知られているエルシャダイは、『そんな装備で大丈夫か?』、『大丈夫だ、問題ない』だと思う」(竹安氏)。

 こうした話をどこかで出さないともったいないと思っていたそうだが、あるチャンスが訪れる。「いつも思うが、チャンスは気まぐれ。こちらの準備ができていない時によく来る。そしてできるはずがない、というところから始まる。ただそういうチャンスを頂いた時に思っているのは、全力でやろうということ。その先には後悔のない世界がある」(竹安氏)。そのような中で書き上げたのが「『エルシャダイ』原作小説」だった。

 550ページにもなる大作だったが、1番の問題点は、竹安氏が小説が嫌いだったこと。しかし書かなければならなくなり、体調を崩しながらも「身を削って作った作品」。しかし評判もよく、アマゾンのレビューなどでも、「これで納得した」という人も多かったそうだ。書籍も何度か増刷された。このため続きを書かないかと出版社に誘われたが、会社がなくなってしまったので作れないという話に。

 そこで新たなチャンスがまた訪れる。それは「エルシャダイ」の権利取得という話。「話すと長くなるが、短く話すと、すごくたくさんの人に助けられた」(竹安氏)。そして権利を取得してからは、自由に使えるようになった。そこで、もう小説は書きたくないと思った竹安氏は、マンガを描いた。「とりあえずこれを描き上げることで、僕が『エルシャダイ』でやり残したことには節目を付けることができた」(竹安氏)。

 自分の立ち位置は「下請け会社にある」と語る竹安氏。「そういう意味ではフェスタにふさわしいインディー側の人間」(竹安氏)。竹安氏はインディーについてよく言われることとして、弱小なのか、零細なのかという問題があると指摘。「しかし経験から言うと、インディーは弱小とか零細ではなく、何よりも自由がある。独立性の高さがあるということだと思っている。だからこそインディーの使命は、ものを作ろう、やり続けるということにある。大きな企業は止まることがよくあるが、インディーは止まらない世界」と竹安氏。作り続けていれば、大きなチャンスが来る、とも。その時には「今まで作り続けてきたんだから、同じようにすればよい。それがインディー精神」(竹安氏)。

 竹安氏自身も、「エルシャダイ」が終わってからも、作品を作り続けるという作業をしているのだそう。その活動を「神話構想」と名付けているそうだが、ファンのあいだでは「終わりない沼」と呼ばれる、「エルシャダイ」をベースとしたオムニバスストーリーを作っている。ここまで展開すると、嫌いと言いながらも小説が書けるようになってきたとのことで、小説として発表される作品も多くなったそうだ。

 「エルシャダイ」については、ゲームよりも言葉や映像が非常に話題になった。これについて「インディーっぽいコメントを言いたいと思った」と語る竹安氏。ここで竹安氏は、「エルシャダイ」の動画をニコニコ動画に誰かが勝手にあげたものについて、600万再生を突破したあとも、現在まだその記録を更新していることに言及。「これに対して率直に思っていたのは、すごく腹が立ったということ。その理由は画質が低かったから(笑)。元は今から7、8年前にフルHDで作った非常に高画質な映像。その時代を知っている人は、その映像を作るのがいかに難しかったかわかると思うが、それがものすごく汚くなって流れているのに腹が立った」と語り、せっかくの機会なのでということで、フルHDバージョンが上映された。

 日本で「エルシャダイ」が話題になった時に、「弟の敵を取るんです」という言葉がはやったが、弟はゲーム中に出せなかった、と竹安氏。「非常に僕としてもつらい決断」だったそうだが、小説には弟も登場している。そしてゲームのストーリーをマンガとして自社出版しているとのこと。そして次にやろうと思っていることとして「梅雨のルシフェル展」を東京・新宿にある「ギャラリーエルシャダイ」で6月3日~17日までの期間で開催されることも紹介された。

 長年のファンがいる本作なので、「みんなで『エルシャダイ』を作ろう」とブログで呼びかけたところ、本当に「エルシャダイ」が好きで、育てたいという人が15人以上集まったという。こういう仲間と「エルシャダイ」を育てていければと考えている、と竹安氏。中にはあまりに作品が好きすぎて、涙を流しながら一緒に頑張りたいと言った人もいたそうだ。

 そして最後に言及したのが、「2週間以内に新たな神話構想を発表します」ということ。「これはインディーでなくメジャーなものなので楽しみにしてほしい。ただしメジャーで出るものなので口止めをされている。それがインディーとメジャーの違い」(竹安氏)。発表されるという新作の情報に期待したい。

GAME Watch,岩泉茂

最終更新:5/13(土) 7:00

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