ここから本文です

開幕4連勝から急失速のヴィッセル神戸…指揮官の自信の理由と浮上へのカギとは/コラム

GOAL 5/13(土) 13:45配信

3年目となる『ネルシーニョ体制』で迎えた今シーズン。ヴィッセル神戸はシーズン前に同監督が宣言した「本気でタイトルを狙いに行く」という決意の実現に向け、順調な滑り出しを見せた。事実、2月25日の清水エスパルスとの明治安田生命J1リーグ開幕戦を1−0と、ネルシーニョ体制では初の白星発進を遂げると、この一戦を含めて4節のジュビロ磐田戦までクラブ史上初の『J1開幕4連勝』。J1クラブの中では唯一の全勝で首位に躍り出た。

その流れに最初のブレーキがかかったのは5節の浦和レッズ戦だ。今季初となる上位クラブとの対戦は、前半こそスコアレスで折り返したものの、後半立て続けに2失点。その後、途中出場のMF中坂勇哉が1点を返したもののアディショナルタイムには再び浦和に追加点を許し、今季初の黒星を喫した。

「敗戦は悔しいですが、今日の試合で選手たちがファイティング・スピリットを見せてくれたことに希望の光を感じます。ヴィッセルはもっともっと上にいけるチームであると今日、感じることができました(ネルシーニョ監督)」

それが決して強がりではないということは、続く6節の大宮アルディージャ戦での完封勝利で証明されたものの、再び7節の柏レイソル戦に敗れると、サガン鳥栖、ヴァンフォーレ甲府と3連敗。さらに、直近の10節・サンフレッチェ広島戦にも引き分けるなど、4試合、白星から遠ざかり、一気に8位まで順位を落とした。

■選手たちの指揮官への揺るぎない信頼

その原因の1つが深刻な決定力不足だ。チームの大黒柱FWレアンドロが開幕戦で長期離脱となったことは、当初から懸念材料ではあったが、ここにきて、その不在の大きさを痛感することに。実際、ここ4試合で奪った得点はわずかに2つ。甲府戦では19本ものシュートを打つなど、チャンスこそ作り出したものの、それを明確な結果につなげられずにいる。

序盤の戦いでは今年の武器の1つである『セットプレー』を中心に奪えていた得点も、プレイスキッカーの一人、MF藤田直之がケガで戦線離脱になったことも響いて最近では武器を活かしきれていない印象だ。また、何より、レアンドロ不在の今、チームきっての得点源と期待されたFW渡邉千真に未だゴールが生まれていないことも、チームの勢いに停滞を感じる理由だろう。

とはいえ、ネルシーニョ監督は現状を悲観していない。事実、浦和戦以降、たとえ結果が出なくとも、氏は一貫してポジティブな発言を続けている。

「チャンスを作れていないのなら問題ですが、チャンスを作れているだけに私は現状を悲観していません。千真についても、彼は普段の練習から努力していますし、試合での得点への意欲も感じます。そろそろ彼の気持ちとゴールがマッチングするはずです。また、順位を8位に落としましたが、我々は非常にいい位置につけていると感じています。それは5位から8位の私たちまでの勝ち点が僅差でひしめき合っている状況からも明らかです。これは、いいサッカーを続けてきたからこその結果であり、まだまだやるべきことはあるとはいえ、我々はその事実に自信を持つべきだと思います(ネルシーニョ監督)」

そうした言葉にも背中を押され、下を向く選手はいない。これは並行して戦っているルヴァンカップで4戦全勝という結果を出せていることもあるが、何よりネルシーニョ監督への信頼に揺るぎがないからだ。「序盤戦のサッカーを取り戻せれば、必ず結果は出せる」というDF岩波拓也の言葉に代表されるように、チーム一丸となって現状を乗り切ろうとする意欲も窺える。

■MF大森の言葉に隠された浮上へのカギ

ただ1つ懸念材料を挙げるとするなら、勝てていない事実によって、この先、選手がこれまで以上に、戦術にがんじがらめになりすぎないか、ということ。もともと『戦略家』として知られるネルシーニョ監督は、相手の戦い方を踏まえたリアクションサッカーで結果を求めることが常で、ここ2年も氏の手腕によって導き出された結果も多分にあったが、もうワンランク上のクラブへとレベルアップを図るには、いい意味で、選手の自主性が必要なはず。つまり、ネルシーニョ監督の戦術を体現することに留まらず、ピッチ上で戦況を体感している選手が、状況に応じたプラスアルファを加えていくことができなければ、最終的に上位チームを上回ることも、ともすればその戦術を封じ込められた際に結果を求めることもできなくなってしまうことだろう。

今季、ガンバ大阪から加入し、2014年には同クラブの『三冠』の立役者にもなったMF大森晃太郎の言葉が蘇る。

「ヴィッセルの選手は外から見ていた以上に足元のうまい選手も多いし、スピードや運動量があるとか、ジャンプ力がある、フィジカルが強いといった個性がしっかりあって、間違いなくそれらは試合でも通用するレベルにある。なのに、試合になると戦術に気をとられ過ぎるせいか、それが出せない。それはすごくもったいないし、今後ヴィッセルがもうワンランク上のチームになるためにも必ず克服すべき部分だと思っています(大森)」

その言葉に、今後の浮上のカギが隠されている。

文=高村美砂

GOAL

最終更新:5/13(土) 13:45

GOAL