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<仏大統領選>トッド氏「国民は独への追従を否定せず」

毎日新聞 5/13(土) 9:30配信

 7日に行われたフランス大統領選の決選投票は、開かれたフランスを訴えた中道・独立系のエマニュエル・マクロン前経済相(39)が、「自国第一」や欧州連合(EU)離脱を問う国民投票の実施を掲げた極右・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン氏(48)を破った。仏国民は何を選択したのか、フランスはマクロン氏の主導でどこに向かうのか、フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏に聞いた。【聞き手・パリ賀有勇】

 英国のEU離脱決定(ブレグジット)や米国のトランプ大統領の誕生は、国家主義、保護主義的な変化といえる。一方、フランスはどうだったか。改革を訴えるマクロン氏だがEUとの向き合い方などをみればオランド政権の継続だ。有権者は(EUを主導する)ドイツへの追従を否定しなかった。仏国民は変化を拒否したのだ。

 変化を望まない階層は誰なのか。人口統計学的にみると、EUを発足させたマーストリヒト条約が調印されてた1992年から、フランス人口の年齢の中央値は6歳(34歳から40歳に)上昇し、高齢化が進んでいる。また高度な教育を受けた割合も約25%へと倍増し、学歴の階層化も進んでいる。

 変化を拒否し、マクロン氏を押し上げたのはこうした中流階級の中高年や高齢者であり、高学歴の国民だ。エスタブリッシュメント(支配層)は、単一通貨ユーロからの離脱が通貨暴落を招き、年金受給などに影響すると説く。ユーロとともに安定した暮らしを送ってきた人々は(変化に)不安を感じている。

 ルペン氏を支持した中心は、低所得の労働者階級の若者であり、それ以外の階層ではFNの支持者はマイノリティー(少数派)であることが証明された選挙だった。

 社会党のオランド政権の不人気を背景に、ルペン氏は第1回投票で35%を得票してもおかしくないと指摘されていたが、得票率は前回大統領選より約3ポイント高い21・3%にとどまった。過去最多得票だったとはいえ、FNにとっては惨敗といえる。

 決選投票では、「反ルペン票」がマクロン氏に投じられたが、ルペン氏にも「反マクロン票」が投じられたことを忘れてはならない。EUからの離脱も辞さない姿勢で過激と判断される極右や急進左派の支持者からすれば、労働者を守らずに自由貿易を唱えるマクロン氏も「過激」なのだ。

 一方、大統領選で、急進左派・左翼党のメランション元共同党首が躍進したことは特筆すべきことだ。労働者層も教育水準の高い左派層も、変化を求めて彼の下に集ったのはフランスの左派にとっては良いことだ。わたしも1票を託した1人だ。

 今後、マクロン氏は大統領として、ブレグジットという難題に直面する。独仏関係に注目が集まりがちだが、英仏の経済的なつながりは軽視できない。マクロン氏はドイツと英国との間で難しい立ち位置になるだろう。

 また、国内では、高い失業率を改善させるのは容易ではなく、若者が将来の展望を描けない状況は今後も続く。格差への不満が暴力として表れ、イスラム過激思想と結びつけばテロにもつながりかねない。

 これまでのところ体制順応主義者として振る舞ってきたマクロン氏が、大統領としてオリジナリティーを見せられるのかどうか試されるだろう。

最終更新:5/13(土) 9:30

毎日新聞