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処分明けたシャラポワの“特別扱い”はそんなにおかしいか

日刊ゲンダイDIGITAL 5/13(土) 9:26配信

コラム【スポーツ時々放談】

 マリア・シャラポワを知らない人はいないだろう。ウィンブルドンで優勝したのが17歳だった2004年。その前年にジャパンオープンでツアー初優勝しており、“胸ポチ”など余計なことを含めて、日本はマリア人気で先んじていた。

 全仏オープンからウィンブルドンとテニスシーズンはこれから真っ盛りだが、シャラポワを出すなという声がくすぶっている。

 発端はシャラポワのドーピング違反だ。16年3月に自ら会見を開き、禁止薬物のメルドニウム服用を認めた。国際テニス連盟は15カ月の出場停止処分を科し、処分が明けたのが4月26日。問題はそこからだ。

 15カ月間、プレーしていなかったため持ちポイントは0。下部大会から這い上がらなければいけない理屈だが、早速、ドイツのシュツットガルトで開かれたポルシェ・テニス・グランプリが主催者推薦枠(ワイルドカード=WC)を提供した。

 しかも、開幕は解禁前の24日。シャラポワの初戦を水曜日に回す異例の計らいまでしたことで、選手間から不満が噴出した。ドーピング違反者の特別扱いはおかしいというわけだ。

■世界ランク262位

 非難の嵐、久々の実戦にもかかわらずシャラポワはベスト4に入り、ここで問題が再燃した。世界ランク262位まで戻し、これが微妙。全仏オープンはこの週に締め切り、昨年の予選カットラインは212位だったから本来なら出場は難しい。選手たちは、全仏までが予選あるいは本戦のWCを提供するのではないかと目をとがらせるのだ。

 メルドニウムは15年まで禁止リストに入っていなかったなど、シャラポワ側にも言い分はある。それはともかく、みそぎは済んだから、非難の矛先は大会主催者で、その大会側にも言いたいことは山ほどある。

 女子ツアー(WTA)は1970年、ビリー・ジーン・キングらの有名な「1ドル契約」で旗揚げした。昨年の賞金総額は1億3700万ドル(約152億8000万円)だ。男子ツアーの1億1913万8646ドルより多いが、では、知っている女子選手を挙げろと言われて誰の名前が出るか。シャラポワを除けばセリーナ・ウィリアムズくらいで、そのセレナは妊娠で長期休養を宣言……。

 スポンサーなしにプロツアーは成り立たない。そのためにもWCの枠は用意されている。シャラポワ前のアンナ・クルニコワという美貌の少女にはどこからでもWCが舞い込んだし、シャラポワの人気、実力なしに現在のリッチな状況は生まれなかった。ベテランのトーナメントディレクターは「私なら、スポンサーが反対してもシャラポワを取りにいく」と話す。誰が客を呼べるのか。ドーピングは重大問題だが、それを忘れたら閑古鳥が鳴く。

 全仏への出場可否は5月16日に出る。

▽武田薫(スポーツライター) 1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

最終更新:5/13(土) 9:26

日刊ゲンダイDIGITAL