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「ウォール街はトランプ政権に失望」「GDPの伸びは3%に近づく」S&P指摘

ZUU online 5/13(土) 18:40配信

「トランプ政権100日は失望だったというのが正しいと思われる」―-。

世界最大手格付け機関で知られる金融サービス会社S&Pグローバルが出した評価である。チーフエコノミストのポール・シェアード氏は、日本記者クラブが10日開催した研究会で講演し、トランプ政権の政策の功罪について語った。

■「負」のシナリオが目立つ

シェアード氏は、トランプ氏について「コミュニケーションの仕方が普通とは違い、政治経験もない」と述べ、経済についての主張も論理的といいがたく「解釈が難しい」と語った。

トランプ氏の政策の柱はここまで来て、「規制緩和」「税制改革」「インフラ投資」などに集約される。トランプ氏のシナリオが成功するとするなら、穏やかな減税と規制緩和を併せて、貿易と移民政策に優しい環境がパッケージ化されることである。その結果、GDPの伸びは、政権が目指す3%に近づきそうだと指摘した。

同氏はしかし、現実は「負」の面が多く、トランプ氏が主要な政策を実現する可能性は明白ではないと述べた。トランプ氏の言う減税案では、連邦政府の赤字と金利は上昇してしまうだろう。2010年以来成長率は2%から2.5%平均を維持してきたが、このままでは2019年までの状態は何ら変わらない見通しとなる。

「負」のシナリオはさらに深刻で、トランプ氏はキャンペーン中の公約が実らず、死後硬直状態に陥る可能性もある。手詰まり状態と保護主義が大統領就任直後の楽観主義を砕き、実質GDPの伸びは2018年を通じて1.5%前後にとどまる恐れがある。ウォール街の一部では、「トランプ氏は4年の任期ももたない可能性がある」「途中で投げ出すのではないか」と、ささやかれているという。

■トランプ氏が直面するハードルは高い

S&Pのエコノミストの予測では、2018年の経済成長を大いに押し上げるためには、規制緩和と小規模インフラ(投資)活動とともに、穏やかな規模の減税が望まれるという。財政赤字はこのままでは、トランプ氏就任時の2.9%より拡大して、2020年にはGDPの4%になる。

トランプ氏の最大の公約、移民制限と医療保険制度改革法(ACA)つまりオバマケアの撤廃とも停滞している現状だ。トランプ氏は大幅減税案や規制緩和など、最近のほかの提案すらますますハードルが高くなることに気付くことになる。

共和党多数派の下院は、トランプ氏の政策をなお見守るチャンスを与えている。S&Pのエコノミストの予想では、穏やかな減税と規制緩和が望まれるが、2018年中間選挙の真のプレッシャーを感じるまで、2つの政策とも議会で合意されることは期待されない。

■トランプ氏の経済政策に苦言

世界最大の経済の底力は、トランプ氏が船出する権利行使の時間を与えている。トランプ政権誕生前に、米国経済に楽観的な兆しはすでに生まれていた。雇用は堅調、控えめだが給与アップ、住宅市場も引き続き力強く、企業投資も伸びている。米国内の底力が、ぱっとしない海外の成長とドル高による輸出の停滞を相殺している。

米GDPの伸びが2%範囲内にとどまれば,トランプ氏が約束する3-4%にはとても届かない。今年第1四半期の経済成長は、この3年で最も低く推移し、今年のそれは2.3%、2018年も2.4%になりそうで、今後12カ月にリセッションまで後退する可能性は20-25%ある、とS&Pは見ている。

雇用創出は年初段階ですでに堅調であることから、労働者の賃金は年末までに3.2%上がる見込みである。しかし、企業はトランプ政権誕生前に、労働者に比較的高い賃金で雇用していた。S&Pは、トランプ氏がオバマ政権と連邦準備制度(FRB)の政策のおかげで回復基調にある経済を一手に握り、あれこれ操作するのではなく、「アメリカを再び偉大にしよう」の精神に戻ることに心がけようと指摘している。

■タイミングが問われる

政策の柱の1つ「規制緩和」は、プラスの効果が期待できる数少ない政策の1つである。トランプ氏は半額セールのルールを適用して、1つの規制導入の際に2つの規制を撤廃するよう求めている。リーマンショック後の2009年以来、連邦政府は229件の規制を課している。緩和には、環境整備と実施する適切なタイミングが問われる。

「税制改革」は目玉政策になろうとしている。法人税35%を15%に引き下げを柱とする減税案は、1986年以来の税法改正となる。しかし、S&Pはトランプ氏と共和党保守派との緊張から見て、そのままの税率での実現は当面難しいと見ている。共和党の目算は、10年で1.2兆ドルの底上げとなるせいぜい20%までで、原案では財政赤字と金利上昇という「負」の効果を招きかねない。大統領任期切れとなる2020年の連邦赤字は、就任時のGDPの2.9%から4%に増えてしまう。

「インフラ投資」は、10年で1兆ドルを投入する計画である。その1つ、エネルギー・インフラ投資法は、石炭産業を支援し、気象変動と戦う国際的努力への挑戦である。税法上の優遇措置、官民提携による投資の乗数効果は、ひとえに実施のタイミングにかかっている。S&Pの予想では、インフラへの1ドル投資は、数年後にGDPに1.70ドル付加する。

ウォール街が注目しているもう1つの側面は、金融・経済を動かす人事である。来年2月に任期満了するFRBのイエレン議長の後任に、ビジネスマンあるいは金融経験者がなるだろうという見方が出ている。FRB議長は言うまでもなく経済政策の中心である。また経済政策の司令塔である国家経済会議(NEC)議長に、米証券大手ゴールドマン・サックスのゲーリー・コーン社長兼COOを充てることも注目される。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)

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最終更新:5/13(土) 18:40

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