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気まぐれな痛みのもどかしさ 錦織「リスクは避けた」

朝日新聞デジタル 5/13(土) 9:12配信

■匠の圭

 久しぶりに男子テニスの錦織圭(日清食品)の試合を生で見られると思い、前日深夜、国際サッカー連盟(FIFA)総会の取材でいたバーレーンからドーハ経由の便で、マドリード・オープンに駆けつけた。

 会場で取材証を受け取り、1時間もしないころだった。プレスルームにあるテレビ画面が錦織の棄権を告げた。ほどなく、念を押すように棄権を知らせる非情のアナウンスが大音量で流れた。右手首痛が完全に癒えていないことは錦織本人が告白していたから、ある程度は覚悟していたけれど……。

 記者会見場に現れた錦織の表情は、さばさばしていた。けがと向き合う忍耐、試練には慣れている。

 「昨日の試合の後から少し痛くなって、まあ来週も出たい気持ちもあるので、そのリスクは避けるのを選びました。まあ完璧にというか、100%ではプレーできないので、たぶん、まあ休んで、なるべく100%に戻してから、またローマに出られるようにがんばります」

 まずは日本語で棄権の理由、そして今後の見通しを簡潔に説明した。

 実際、どれくらい痛いのだろう。誰もが気になる。感触を探る質問が飛んだ。

 大事を取った棄権なのか?

 「そうですね。プレーはできますけど、昨日から少し悪くはなっているので、ここから悪化しても……。治りかけだとは思っているので、悪化するのだけは避けたいので、まあ、手首ということもあるので、大事を取りました」

 手首の痛みはショットにどういう影響が出るのか。古傷ととらえていいのか?

 「ええ、前の痛みと同じですね。ショットによっては全く痛くない場面と、痛くなるショットもある。なるべく全部が治ってからプレーはしたい。かばってプレーしているとほかに痛みが出たり、イライラも出たりするので」

 3回戦でダビド・フェレール(スペイン)を破った前日からの痛みの推移については、こう言った。

 「試合後はちょっと痛かったですね。さらに今朝も痛かったので。治っていることもたまにはあるんですけど……。あの痛みが増していたので。まあ正直、試合中も何回かは、初戦も2戦目もあったので」

 気まぐれに襲ってくる痛みへのもどかしさが、言葉の端々ににじむ。毎朝ベッドで目覚め、右手首を触って確かめる光景が浮かぶ。

 マイナス思考に陥りすぎるのも良くないので、ポジティブな言葉も拾ってみたい。

 「このような大きな大会で棄権するのは残念だけど、一方で喜びもある。手首は数週間前に比べて良くなっているし、ここで2試合、簡単ではない相手と戦えたし。前向きに考えて、今後数日を過ごして、来週試合ができるように最大限の努力をしたい」

 14日にはイタリア国際(ローマ)が開幕し、その後には、4大大会の全仏オープン(28日開幕、パリ)が控える。今後の見通しについて、錦織は優先順位をつけた。

 「数日間、オフをとるのは間違いない。ローマは出ようとは思っているけど、今、約束はできない。全仏の方が僕にとって大事」

 「ローマは休日」と割り切り、パリでのグランドスラムに賭ける選択肢をにおわせつつ、記者会見場の去り際、小さくつぶやいた。「ローマは行きますよ」。ギリギリの判断になる。(マドリード=稲垣康介)

朝日新聞社

最終更新:5/13(土) 11:17

朝日新聞デジタル