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「悪魔の病」に侵された母親 淡々と語ってくれた彼

東スポWeb 5/13(土) 16:45配信

元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」

【ジョー・スミス投手(ブルージェイズ)】その名を「デビルズディジーズ(悪魔の病)」とも呼ぶらしい。「パーキンソン病、認知症、アルツハイマーが全て一緒になった病気。人にはそう説明しているよ。遺伝子の異常による遺伝的な病気で、米国では25万~30万人のハンチントン病患者がいるといわれている。発症は30~40代に多いけれど、症状がいつ現れるかはわからない。現代の医学では薬で進行を遅らせることはできても、治す方法はまだ見つかってないんだ」

 もう何度も伝えてきたのだろう。ハンチントン病について淡々と語ってくれたブルージェイズのジョー・スミス。2012年の2月、母リーさんが診断された不治の病だ。「キャンプ中に父から電話がかかってきて、母がハンチントン病だと聞かされたんだ。その後、母が電話を代わって『ハーイ、ジョセフ』と言った時の空っぽな音、今でも忘れられない…」

 ジョーの祖母もハンチントン病だった。まだ幼かったころで、少しずつ進行していく病をあまり理解できていなかったが、74歳まで生きた祖母の変化は子供心に傷を残した。それと同じ病を母が患っている…。

「ハンチントン病の症状は人それぞれで、起きたらある日突然おかしくなっている、とかじゃないんだ。少しずつサインを出しているんだけど、数年間気づかないほど、ささいなことだったりする」

 リーさんの場合はドアを異常なまでに勢いよく閉めたり、お皿をテーブルに叩きつけるように置いたりするなどの運動症状から始まり、祖母との類似性に家族が気づき始めてから数年して検査に行った。この段階では本人に自覚はなかったという。「母は祖母を見てきたから、この後通る道がどんなものであるか…、人生がこれからどれだけ大変になるかわかっていたから、それを乗り越えるのが最初はすごく大変だった」

 今のリーさんは安定しているという。毎日服用する薬は20種類近く。自分に合う薬が見つかるまで、たくさんの副作用と闘ってきた。「ここ1年は気分も一定しているんだ。物事を認識する力はまだちゃんとある。皆のこともわかるし、話もちゃんと聞いている。そこに母がいるってわかるよ」

 この病の残酷なところは、50%の確率で子供に遺伝するということ。ジョーも妹のメーガンさんも、まだ検査を受けていない。検査を受けるかどうか、ここは意見の分かれるところだと思う。ジョーたちは、先のことを心配する人生よりも今をポジティブに過ごすことを選んでいる。

「僕にもつらくなる日はあるよ。でも前向きでいるしかないし、ポジティブなことに集中するように頑張るしかない。閉じこもって自分の不幸を嘆いたところで、世界中のどの家族もいろんなことを抱えている。できるのは、皆で集まって互いを助け合うことでしょう?」

 母の日はリーさんをトロントに呼んで一緒に過ごす、と話すジョーの顔が少しほころんだ。「母はまだ知らないんだけどね。早く伝えるとパッキングが苦手でパニックを起こしちゃうから、伝えるのは、父が荷造りをすべて終えた前日。それでも、母からきっと『ドライヤーはある? シャンプーは? タオルは?』って電話がかかってくるよ。来てくれるのが今からでも楽しみだよ」

 決して簡単ではないだろうリーさんの話を語ってくれたジョーに感謝するとともに、日本の母への感謝もこの場を借りて記したい。ありがとう。

 ☆ジョー・スミス 1984年3月22日生まれ。33歳。オハイオ州シンシナティ出身。188センチ、93キロ。右投げ右打ち。大学時代にサイドスローに転向し、2006年にドラフトで指名されたメッツに入団。07年4月1日のカージナルスとの開幕戦に2番手投手としてメジャーデビューし、17試合連続無失点を記録する。08年オフにトレードで移籍したインディアンスでは11年と12年に2年連続でチームトップとなる70試合以上に登板。13年オフに移籍したエンゼルスではクローザーも務める。今季からブルージェイズでプレーしている。

最終更新:5/13(土) 19:54

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