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<北九州アパート火災>防火設備と家賃 利用者にジレンマ

毎日新聞 5/13(土) 21:59配信

 北九州市小倉北区清水2のアパート「中村荘」が全焼して6人が死亡した火災から14日で1週間。古い共同住宅をホームレスら生活困窮者が簡易宿泊所代わりに利用していた実態が浮かび、市はこうした「かくれ簡宿」の防火対策の見直しを迫られている。ただ、防火設備を充実させれば家賃に跳ね返る恐れもあり、関係者はジレンマに頭を抱える。

【当時の様子】激しく火花を上げて燃える木造アパート

 「中村荘には本当に助けられた」。今回の火災で犠牲になった岩崎優さん(当時60歳)と同じ203号に今年2~3月に住んでいた無職、石川隆さん(64)は無残に焼け落ちた木造アパートを見つめてそう振り返った。

 石川さんは2月、市内の別のアパートを火事で焼け出されて中村荘に移り住んだ。最初の1カ月の家賃は1日500円で敷金・礼金や保証人は不要。「当時は金もなく、知り合いもいない。突然行き場を失って路頭に迷うところを救われた」

 部屋は4畳半一間でトイレや風呂、台所は共同。最初からテレビや布団、机が備え付けられており、「いわゆる『宿泊所』だった」と証言する。1カ月後、敷金を分納させてくれるアパートを見つけて転居したという。

 市によると、類似のアパートは市内に少なくとも3カ所あり、このうち2カ所は中村荘と同じ不動産会社が運営している。小倉北区役所は同社が作った入居者募集のチラシを生活保護の相談窓口で配布。チラシには「1泊700円~」「カップラーメンプレゼント」などと書かれていた。

 同市小倉北区宇佐町にある鉄筋コンクリート4階建てのアパートは25部屋が満室。家賃は1日1000円で毎週月曜と木曜に集金されている。入居する女性(38)は「お金をためたら移りたいが、今回の火災の影響でここが違法と言われて住めなくならないかが心配だ」と話した。

 同区田町にある築50年以上の木造2階建てアパートの家賃も1日1000円。3部屋全てに1人ずつ入居している。

 ある住人の男性は別のアパートの家賃が払えず移ってきた。「火事は怖いが、住めればいい。住む所がなくて困っているんやから」と声を荒らげた。【木村敦彦、衛藤親、奥田伸一】

最終更新:5/13(土) 23:02

毎日新聞