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映画のおかげで急増した? いまも飛ぶ“もっとも美しい戦闘機”

産経新聞 5/13(土) 10:49配信

 多くの日本人が零戦の姿態を「美しい」と感じるように、欧米諸国の飛行機好きもまた、自国の第二次大戦機に対しては格別の愛着を抱いている。だが“世界一美しい戦闘機”の栄誉ある称号は、イギリスのスーパーマリン・スピットファイアに冠すべきという見解が、世界中の大戦機ファンには共通認識となっている。

 戦闘機とは思えない優美な弧を描く楕円翼、まるでスピード競技機のようにスレンダーなフォルムのスピットファイアはイギリス人の誇りであり、“大英帝国の守護神”とも讃えられている。

 第二次大戦さなかの1940年夏、英本土侵攻を目論むドイツ空軍戦爆連合約3200機を迎えて撃ったのは、わずか750機あまりのスピットファイアと僚友ホーカー・ハリケーン戦闘機だった。しかし4対1という絶望的劣勢にもかかわらず、スピットファイアとハリケーンによる起死回生の奮闘によって、イギリスは歴史上最悪の窮地から救われたのだ。この英本土防空戦を題材にした映画『空軍大戦略』(1969年公開/原題:Battle of Briatain)は、壮大なスケールとセミドキュメンタリータッチの緻密な描写によって、現在でも航空映画史上の金字塔となっている。

 いまではどんな映画のシーンでも簡単にCGで描き出されてしまうが、まだCGなどなかった時代の『空軍大戦略』は、なんと数十機もの飛行可能な大戦機をかき集めて撮影されている。ドイツ空軍のメッサーシュミットBf109戦闘機とハインケルHe111爆撃機は、スペイン空軍が保有していた機体を映画製作会社がそっくり買い取って、パイロットも同空軍から借り受けた。

 ところが肝心の主役スピットファイアは、意外にも飛行可能な現存機が少なかった。そこで大戦機の復元を手がける英ヒストリック・フライング社は、精巧なグラスファイバー製スピットファイアを製作して、あちこちの英空軍基地で展示物になっている実機との交換を申し出たのだ。

 このグラスファイバー製スピットファイアは腐食せず、耐候性も優れているため英空軍基地側も大歓迎で、たちまち十数機もの実機が集まった。そして復元作業を経て飛行可能な状態を取り戻し、映画撮影に投入されたのである。

 やがて映画『空軍大戦略』の公開を機に、イギリスでスピットファイアの偉業を伝承すべく、民間の復元運動が立ち上がって、現状で第二次大戦機としては多い約40機が飛行可能な状態を維持しているのだ。(文・藤森篤)

最終更新:5/13(土) 10:49

産経新聞