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走りながら給電、夢の新技術が始動 次世代の電気自動車

産経新聞 5/15(月) 10:30配信

 自動車の環境規制が厳しくなる中で、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトが待ったなしの状況にある。EVの普及には課題も多いが、東大などはこれらを解消する走行中給電の技術開発に成功。未来の自動車網が浮かび上がってきた。(原田成樹)

 ■“給油”が不要

 走行中給電は電車のように、走っている車両に電気を供給する仕組みのこと。電車の場合は線路や架線を通じて給電するが、EVでは高速道路などにコイルを敷設し、この上を車両が通過するときにワイヤレスで給電する。実現すれば自動車の発明以来、初めて“給油作業”が不要になる革新的な技術だ。

 受電用のコイルは車体の底部に取り付ける方式が一般的だったが、東大の藤本博志准教授らは東洋電機製造、日本精工と共同で、車輪を支えるアームに取り付ける新方式を開発した。

 路面のコイルから受電用コイルまでの距離が変動すると送電効率が落ちる。新方式は車体の振動や荷物の重さによる変動を抑えることができ、モーターへの入力効率は90%を超えた。

 車輪内部に小型モーターを装着し、車輪ごとに回転を制御する技術も融合した。長い回転軸や歯車が不要になり、軽量化や車内空間の拡大が期待できる。

 さらに、ブレーキをかけた際に生じる回生エネルギーをためる蓄電器も車輪の近くに設置し、加減速による電気の出入りを局所的に処理することで、エネルギーのロスを最小に抑えた。

 藤本氏は「多方向に複雑に行き来する電気の回路制御が技術の要」と話す。2025年ごろに実際の道路で実証試験を行い、30年の実用化を目指す。

 ■規制対応で進化

 EVが走行中給電で進化が求められるのは、ガソリン車に乗るのがこれから難しくなるからだ。欧州では21年から、乗用車の二酸化炭素(CO2)排出量が1キロメートルの走行当たり95グラム以下に規制される。ガソリン車でこれをクリアするにはハイブリッド技術なしには厳しい。

 さらに将来は60~70グラムに減らすことが検討されており、燃料電池車を除くと、純粋なEVか、電源から充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)でないと困難とみられている。

 だが15年の国内の新車販売台数に占めるEVとPHVの比率は計1%未満にとどまる。普及を阻むのは、満充電で走れる航続距離と充電時間だ。航続距離は高級車を除くと最長280キロとガソリン車の半分程度で、80%充電するのにスタンドで30分待たなければならない。

 経済産業省は販売比率を30年に20~30%へ引き上げる目標を掲げるが、達成には技術革新が不可欠。重いバッテリーを常に運ぶのは本質的にエネルギーの無駄でもある。走行中給電はこれらを一挙に解決できる可能性がある。

 ■今より安価に

 問題は車の価格だが、むしろ安くなるという。現在のEVで東京-大阪間(約500キロ)をノンストップで走るには約2倍のバッテリーを積む必要があるが、走行中給電なら現在の半分程度で済む。藤本氏は「バッテリーの差額からすれば、コイルなどの追加はたいした金額ではない」とみる。

 実現に欠かせないのがインフラの構築だ。早稲田大の高橋俊輔招聘(しょうへい)研究員は、路面コイルの設置費用を1キロ当たり2~3億円と見積もる。東大方式なら路面の3分の1で給電をまかなえるため、東京-大阪間の高速道路で上下の各1車線に設置すると1千億円で足りる計算だ。

 一方、停車中に給電する技術は18年にも国際標準化される見込みで、早稲田大と東芝、IHIと三井ホームなどが研究しており、数年後には家庭や企業の駐車場などで本格導入が始まる見通しだ。

 走行中給電は停車中の技術を基礎に開発が進むと考えられ、東大のほか豊橋技術科学大などが取り組んでいる。電気の使用量に応じた課金の仕組みをどうするかなど課題もあるが、給油のストレスがなくなることは利用者にとって大きなメリットになる。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)など国の機関も後押ししており、一般道路の交差点付近や登坂車線など速度が落ちて効果的に給電できる場所から導入する構想が検討されている。

最終更新:5/15(月) 10:30

産経新聞