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「STAP細胞問題」から3年、それでも研究不正の構造根深く

5/13(土) 9:28配信

ニュースイッチ

倫理教育の限界

  2014年の「STAP細胞問題」から3年を経てもなお、研究不正が生まれる構造は根深く残る。学術界を挙げて倫理教育に取り組むが、モラルだけに頼っても不正の根絶は難しく、学生や研究者を不正に追い込む研究環境の改善と倫理教育を連動させなければ機能しない。自浄作用に委ねず、パラダイムを変える必要がある。不正の対策や防止技術の高度化は新興国などとの国際共同研究にも役に立つ。日本の科学技術を守り、高めることにもつながる。

<動機はほんの出来心や成果へのプレッシャー>

 「問題は根深い。研究者倫理がきちんと浸透するには20年、30年かかる」―。研究倫理の底上げのために研究者らが16年4月に立ち上げた「公正研究推進協会」の札野順理事(東京工業大学教授)はこうため息を吐く。

 これまで研究不正の対策と言えば、実態解明と倫理教育が中心だった。「なぜ研究者の道を外れたのか」「なぜ周囲は防げなかったのか」といった不正の動機や手法を調べる。教授や研究員、学生など、研究室のほぼすべての構成員が不正の主体となっている。

 動機はほんの出来心や成果へのプレッシャー、雇用や事業の継続などさまざまだ。そこで全体に効果の見込める倫理教育が選ばれた。

 倫理教育の実践は不正を減らす効果は確かにある。倫理と一緒に研究作法や論文執筆ルールを教えれば意図しない不正は防げる。だが競争や資金難など、不正の動機そのものは決してなくならない。犯人捜しやケーススタディを重ねても、倫理教育だけでは本質的な解決は見込めない。

<大半が文系学部での盗用>

 文部科学省は14年8月に不正行為対応のガイドラインを改訂し、研究者個人の責任から研究組織の責任への転換を促した。大学や研究機関に倫理教育の徹底や管理体制の整備を求めている。

 発覚した不正事案を報告させているが、15―16年の2年間で13件しか集まっていない。大半が文系学部での盗用だ。理系研究者の肌感覚とはかけ離れた数字と言える。

 実態は「小さな不正はどの研究室でも抱える。不正を避け、巻き込まれない力が研究者に必要な処世術」とさえ指摘される。不正を見つける仕組みとしては機能しているとは言いがたい。これでは不正が増えたのか減ったのか、対策の効果を測るのは難しい。

 研究者倫理は、不正対策の「対策立案」「執行」「効果測定」「修正」というPDCAサイクル全体を支える価値観だ。札野理事は「画一的な講義ではなく研究活動の一部として、ゼミに組み込むべきだ」と主張する。

 自身の研究分野で起こりえる不正リスクをあらかじめ洗い出しておき、予防法を考えておく。研究ノートの管理は当然として、部下や上司、同僚の不正を引き留める効果がある。

 国際共同プロジェクトなど、競争や教育の環境が違うメンバーと研究を進める際にプロジェクトを守ることにもつながる。

日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之

最終更新:5/13(土) 9:31
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