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習近平氏の野望、「中国独自の民主化の道」模索

日刊工業新聞電子版 5/13(土) 16:46配信

チャイナセブン、覆る後継者選び

 先日、北京を訪問し、ある有識者と会った。秋には共産党大会を控えており、話題は政治に向かった。党大会での関心はいわゆる「チャイナセブン」と言われる政治局常務委員の人事である。定年68歳に達していないのは習近平氏と李克強氏のみで、残り5人の大幅な刷新が予想される。

 注目すべきは新任の若手常務委員であり、序列でいえば6番目か7番目が重要と指摘する。党大会ごとに年齢要件のチェックが入るため、一定の若さが必要となるからだ。そして来年の全人代において「副主席」や「筆頭副首相」に選出されれば5年後の国家主席(総書記)、および首相へと一挙に弾みがつく。

 それでは誰が総書記に就任するのか。一般に言われるのは、太子党(有力指導者の子弟)を中心とする保守派と共青団(中国共産主義青年団)派のたすきがけ人事である。政権交代に競争原理を持ち込もうとしたDeng Xiaoping(ドン・シャオピン)氏の発案と言われる。胡錦濤氏を挟み江沢民氏、習氏と保守派が就任したことから、次は共青団派の順番だが、それが覆る可能性があるとの見立てであった。

 習氏は信頼のおける側近を後継者とし、残り5年の任期の後、10年の院政を敷くというのである。これは彼に与えられた「核心」という権威があるからこそ可能なやり方である。

 長期政権の狙いは、中国の政治改革を促進するためとの説明があった。習氏の演説や論文から透けて見えるのはイデオロギーに必ずしもこだわっておらず、「中国独自の民主化の道」を模索する姿勢である。中国がさまざまな摩擦を抱えるのは、他国とは異なる「特殊性」によるものという問題意識も根底にあるようだ。

 もちろん、こうした見方をすんなりと受け入れることは難しい。多くの人口、多様な民族、長い歴史といった特徴を有する中国にとって党の強力な指導がなければ分裂する恐れがある。大方の見方はこうしたものであろう。

 「民主化」の定義次第ではあるが、20年後であっても欧米並みの体制を求めるのは現実的でない。ただ、一部の地域でまずは選挙を実験し、そこで成功すれば時間をかけて徐々に広げていくといったやり方もある。「中国独自」とは、そうした中国の柔軟性を示唆していると思う。

 北京や上海中心街の若者の生活様式からは、我々との違いは見えにくい。こうした世代が中堅になった時でも、現行の政治体制がうまく機能しているだろうかといった思いにもとらわれる。くだんの有識者の見方が妙に頭から離れない。

丸紅経済研究所所長 美甘哲秀

最終更新:5/13(土) 16:46

日刊工業新聞電子版